夕暮れの町内放送

stdn0316

第1話

 隣町に住む従兄弟が家に泊まりに来ていた。

 昼間は外で遊んで、夕方は晩ご飯まで部屋でテレビゲームをやっていた。


 不意に町内放送が鳴り響いた。うちは放送がよく聞こえる位置にある。

 放送の内容はこんな風だった。


「迷子の方を探しています。ご協力ください。身長は155センチくらい、痩せ型でちょっと長めの黒髪をした色黒の男の子です。ご協力お願いします。ご協力いただける方は、今からA公園の砂場に来てください」


「迷子かー!俺ちょっと探しに行ってこようかな!」

 従兄弟は活発で、小学校高学年男子にありがちな万能感というか、自分には何でも出来てしまうと思う節があった。


「やめとこうよ、もうすぐご飯だし...それにちょっと変な放送だよ」

「何が変なの?分かった!お前ちょっと怖いんだろ〜大丈夫だよすぐ見つけてくるから!もし晩ご飯呼ばれちゃったらおばさんには適当に言っといて笑」


 彼は人の話をあまり聞かない。ちゃんと止めようとする前に、部屋から駆け出してしまった。

 自分は行けなかった。


 その後、彼は戻ってこなかった。


 あの放送は3日連続で繰り返されており、あの日以降放送されることはなくなった。


「迷子の方を探しています。ご協力ください』




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