ロマンと迷宮と憧れ

@borosuzume

第1話 プロローグ的な舞台説明

 始まりは山間の寂れた村の中に見つかった斜面に空いた洞。

 

 こんな場所にあったかなと、地元の者が中に入っていく。

 

 薄暗く人一人が通れる幅の道を進むと、まぶしい場所に出る。

 目が慣れてきて見えるようになった場所は、異様な広場だった。


 壁には無数の棚のような場所があり、そこに丸い物体が鎮座している。床は石畳で、新品のように輝き、汚れ一つついていない。

 明るいのは、見上げてもなお高い天井から差し込んできている光がもたらしているようだ。


 ここまでの大きな空間を重機も使わずに作るのは困難で時間もかかる。田舎だからこそ、よそ者は目につくし、村の者だとしても普段と違う行動していれば気が付かないはずがない。

 重機を使えば、当然目立つ。というより、先ほどの道幅であれば、 通ることすら難しい。

 

 なにかよくないことが起きているんじゃないか。そう判断した地元の者はすぐに外へ出て警察へ連絡。

 しかし、やってきた警察は誰かの悪戯かドラマかなんかのセットだろうと取り合わない。


 訝しむも何をするでもなく放置するしかできなかった。

 どう埋めるかとのんびり話し合っている間に、地元の小学生が中に入ったことにより事態は大きく動き出す。

 

 小学生が右手を前方に突き出すように構えると、掌の少し先にで火の玉が現れる。

 やがて火の玉は少し先へと飛んでいき、地面に落ちると軽く爆ぜて消えた。


 今までは作り話の中にしか存在しなかった、魔法と呼ばれるような現象。

 驚いた大人達が子供から聞き出せたのは、中にあった球体に触れた後に、なんとなく使い方が分かったということ。


 慌てた大人たちの調査により、いくつかのことが分かった。

 まず、球体に触ると何らかの力が手に入る。

 

 剣士や槍士、魔導士等、の所謂職業とも取れる力。

 武器を扱う方法がなんとなく分かるようになる他、程度の差はあるが力を得ていない時よりも身体能力の向上も見られた。

 それ以外に、攻撃が武器の長さを上回るほどに届いたり、超常現象を引き起こす魔法といった物も手に入った。


 また、戦う力だけではなかった。

 物を作りだす力。現代工業に劣る部分がある一方、勝る部分もあった。


 つまり、球体に触れれば技術と技、いくばくかの知識が球体へ触れたものに宿る。

 

 一度力を手に入れたらそれ以降、球体に触っても何も起きない。

 それと、力を得た球体は粒子状の物体となって消えていき、再利用できない。


 そして、この空間は入口以外は外と繋がっていないことが分かった。

 というのも、斜面の別の場所から広場がある場所へと掘り進めた結果、そこには土以外何もなかった。入り口から入った場合のみ、あの空間に行けるらしい。

 

 一息ついたとき、国中いたるところで、似たような洞が見つかったと連絡が入る。

 ただし、今度は洞に2種類あった。先の物と同じ球体のある洞と、球体がない代わりに奥まで道が続く洞。

 後者の洞は、攻撃的な性質を持つ生物も見つかった。

 幾人もの怪我人や犠牲者を出しながら調査を続けた結果、島国にとっては渇望してやまない様々な資源を入手できることが判明する。

 

 これにより、球体により力を得てから洞の探索をおこない資源を持ち帰ることを国が総力を挙げて推奨するようになり、多くの人が洞の中へ入るようになる。

 

 最初に洞が見つかってから数十年。

 球体は恩寵、洞は迷宮と呼ばれ、資源を持ち帰る者たちを探索者や採掘者と呼び、一つの職業として定着。

 医療技術や工業技術も、魔法という新たな技術を組み込むことで大幅に向上した。


 ただ、探索者の死亡率は高かった。

 迷宮の奥にけば行くほど狂暴になる、魔物と呼ばれるようになった攻撃的な生物。

 通路塞ぐ単純な物から複雑かつ巧妙な罠の数々。


 探索者を目指すものが減っていくことを危惧した政府は、しっかりと基礎教育を行うことでより長い間、より良い質の資源を持ち帰れるように、教育機関も立ち上げた。

 

 この話の舞台は、そんな中にある教育機関に入った少女の話。

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