ロマンチック
しゆ
ロマンチック
「ねぇ一途、抱っこしていい?」
「え?突然何?」
2人っきりの部屋の中が静寂に包まれる。
「いや、いい、何でもない。ごめん忘れて。突然変なこと言ってほんとごめん」
花織ちゃんは手で顔を覆ってそっぽを向いてしまう。
しまった……突然のことに驚き過ぎて凄く冷たい言い方をしてしまった。
「ちが、違うの!ごめん、ごめんねぇ、嫌なわけじゃないの!!突然過ぎてびっくりしただけ!!」
私は大慌てで弁解する。
「ううん、僕が変なこと言ったのが悪いんだ。ごめんね一途」
花織ちゃんはそっぽを向いたままだけど、明らかに落ち込んでいるのが分かる。
「違うの違うの!!そう言う意味じゃなくて……私花織ちゃんに抱かれたいよ!!だからお願い!私を抱いて!ねっ!」
「え……」
花織ちゃんが目を丸くしてこちらに向き直る。
あ、今私、焦りすぎておかしなことを口走った気がする。
「ほんとに良いの?」
花織ちゃんはかがみ込んで、上目遣いで私の顔をのぞき込む。
…………花織ちゃんまつ毛長いなぁ。じゃなくて
「う、うん良いよ」
花織ちゃんの可愛らしい動作にドキドキしながら、両手を広げて受け入れる。
「やった!」
花織ちゃんの顔がほころぶ。
「よっと」
花織ちゃんは、私の背中に腕を回すと軽々と私を持ち上げる。
ふわっと地面から足が離れて、私は花織ちゃんの首元に両手を回して抱き着く形になる。
「すごいすごい!花織ちゃん力持ちだね!!カッコいい!!王子様みたい!!」
私は感激して花織ちゃんを褒めちぎる。
「あははっ、一途が軽いんだよ」
と花織ちゃんは爽やかに笑う。
「ねぇ一途」
花織ちゃんは急に真剣な顔になって囁く。
「一途の顔が、こんなに近くにあるよ。ほら」
花織ちゃんは、頭を前にこてんと倒して、私のおでこに額を当てる。
「ほ、ほんとだね」
花織ちゃんの言葉で、急に意識してしてしまって顔が紅くなる。
「幸せだね」
そう言って微笑む花織ちゃんの顔は、まるで天使のように見える。
「うん、幸せ」
私も目を閉じて応える。
不意に、唇に柔らかいものが触れる。
驚いて目を開けると、花織ちゃんの顔が離れていく。
「ありがとう一途、満足した」
花織ちゃんはそっと私を降ろして、ひらひらと手を振る。
「今……」
言葉の途中で、花織ちゃんの長くて綺麗な指が私の口を塞ぐ。
「それ以上は言っちゃだめ」
「恋の魔法をかけたんだ」
「魔法が解けないように、魔法の正体はヒミツにしてて」
そう言って誤魔化すように笑う花織ちゃんの顔は、すごく真っ赤だったから。
魔法にかけられた私の顔も、きっと真っ赤だったと思う。
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