王家待望の末っ子王子、5人の姉に溺愛されながら気軽に無双する

風遊ひばり

序章

まえがき


 最近良いことがあって、なんだかハッピーな気持ちなのでフライング投稿です。見切り発進ですが……


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 その日、魔法大国『ハルメシア』は歓喜の渦に包まれました。


 国王グラシエルと王妃オリヴィエとの間に、新たな子が産まれたのです。



「国王様、無事に産まれました! それも男の子ですよ!」


「おぉ、おぉ! ついに……ついに産まれたのじゃな……! オリヴィエよ、よく頑張ったのう!」


「えぇ、あなた……こんな嬉しいことはありませんわ……!」



 嬉しさのあまりに抱き合って泣く国王と王妃を見て、出産の手助けをした侍女達も思わず感涙を流しています。


 それもそのはず、二人には5人の子供がいましたが、全て女の子。王位継承の序列1位となる男の子は産まれていなかったのです。



 王妃の年齢的にも最後の望みとなった今回の出産でついに男の子が誕生し、王家の直系が次の王座につくことができるようになったのでした。



「この子の名は『カイゼル』としよう!」


「あら、初代国王様の名をいただいたのかしら?」


「うむ! この子はきっと、良き王となる! この場所にハルメシア王国を作り上げた初代のように、この国を一層繁栄させてくれるであろう!」



 実質的に、次期国王の誕生なのです。それはそれは盛大なお祝いが開かれ、誰もがカイゼルの誕生を祝福していました。


 しかし、その誰もが知らない秘密を、カイゼルは抱えていたのです。


 まさか彼が別の世界から・・・・・・転生してきた・・・・・・など、この時は誰も思わなかったのでした。



        ♢♢♢♢



 カイゼルの誕生からしばらくたった頃……前世の記憶を取り戻したカイゼルは、現在の自身の状況を知り、静かに絶望しました。


 前世の世界と比べて、この世界はあまりにも不便過ぎたのです。



 彼の前世の世界では、人々は空を飛ぶ自動車で移動し、脳に埋め込んだチップから思考入力でコンピュータを動かし、気軽に宇宙旅行に行けるほどの文明だったのです。


 そんな世界で、彼はかつて工学分野で様々な功績を残してきた研究者だったのです。


 宇宙工学を始め、エネルギー分野、AI、果ては軍事分野にまで……彼の研究や発明は、人々の生活を大きく発展させました。



 しかしこの世界では、コンピュータどころか、電気、ガス、水道のインフラすら整備されていません。


 例え王家に産まれたとしても、現代に慣れきったカイゼルには到底許容できるものではありませんでした。


 産まれて間もないカイゼルは、今後の人生を憂いて頭を抱えるのでした。



 そんな彼の内心も知らず、大いに喜んだのは、彼の5人の姉でした。



「ふむ、健康状態も魔力も問題なさそうじゃな」


「それは良かったです♪ この子に、神のご加護がありますように……」


「男の子か……これは鍛え甲斐がありそうだ」


「あぁ、可愛い……食べちゃいたい……」


「おとうと? 小っちゃくてかわいいねぇ……♪」



 彼女達にとって初めての弟です。それはそれは可愛くて仕方がありません。暇さえあればカイゼルの世話を焼き、溢れんばかりの愛でカイゼルを育てました。


 その結果、カイゼルを人智を超越した化け物に育て上げることになると知らずに……。




 しかし、そんなカイゼルの絶望すら掻き消すほどの転機が、彼に訪れるのです。


 それは、『魔法の開花』でした。


 この世界では、産まれて一年以内で誰もが魔法を開花させます。火や風を起こすもの、身体を強化するもの、怪我などを治すもの……魔法の種類は、多岐に渡ります。


 魔法の強弱はあれど、ほとんどの者が魔法を使えるようになるため、この世界は魔法を中心に発展していったのです。



 カイゼルが開花した魔法は『錬成術』。それは、カイゼルの前世の世界で大昔の学者達も欲した、石ころを金に変えることすらできる力でした。


 このことを知ったカイゼルは歓喜しました。『錬成術を使えば、この世界でも研究を続けることができる』と……。



 様々な発見、発明をしてきたカイゼルにとって、魔力が続く限り、そこら中にありふれた物質から望む物質を得られる『錬成術』は、何にも替えられない最高の魔法だったのです。


 そうしてカイゼルは、この新たな世界でも研究に没頭する日々を送ったのでした。






 これは、後にハルメシア王国を数千年続く大国に育て上げた偉大な王の、その始まりの叙事詩。



─────────────────────

あとがき


 皆様の反応が良ければ『小説家になろう』の方にも出すかもしれないので、♡やコメント等を頂けるとありがたいです(_ _)

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