フィニッシュライン
竹たけ
第1話 目指す場所
今から数年前のある日、少年はテレビでオリンピックの100m決勝戦をみた。それそはそれは一瞬で決着が着くとても短く、とても激しい戦いだった。少年はその一瞬の戦いに心を奪われる。
一年が経ち、やがて少年は中学へ入学し陸上部へ入部した。少年はもちろん100mをやる事にした。それから少しして記録会の100mへ少年は出場した。そして少年が最初のレースで出したタイムは13秒94。最初のレースにしては結構速い様に感じるが少年は悔しかった…何故なら周りには自分より速い者が何人もいたからだ。それから少年は努力をしてタイムを13,12,11秒9.8.7.6.5.4と伸ばしていく。しかしまだ頂点には立てない…やがて少年は最初の目的を忘れていった。そして何もないまま中学の陸上生活が終わった。少年はもう陸上への情熱がなくなりかけていて、私学や公立校の特色化などの推薦をも断り普通の高校へと進学する事にした。
それから入試、合格発表、あっという間に終わった。そしてすぐ入学式も終わり少年は初めて自分のクラスへ行った。少年のクラスメイトは初めて見る奴ばっかりだった。しかし一人だけどこかで見たことがあるように感じる者がいた。だがその日の少年は特にその者とは関わることなく、教科書類の配布や次の登校日の説明を受けてすぐ帰った。
〜次の登校日〜
少年は特に知り合いも居なかったのでずっと席に座っていた。しかし隣の席の奴が少年に話しかけてきた。
「ねぇねぇ、君の名前なんて言うの?」
「え、え…?」
突然の問いかけに少年も驚く。
「悪い悪い、こう言う時は普通自分から名乗るよな、俺の名前は"時田進"って言うんだ。君は?」
「ああ、俺の名前は"嶋町瞬"だ」
「瞬って言うのか、よろしくな!」
「ああ、よろしく」
「で、瞬は入る部活とか決めてんの?」
「いや、別に…」
正直、瞬は部活に入ろうとは思っていなかった。
「俺もなんだよな〜、中学では野球をやってたが高校ではやろうとは思ってないんだよな…。」
「俺も中学と同じ部活には入るつもりはないな。」
「へー、てか瞬は中学何部なの?」
「俺は陸上部だ」
「陸上ね〜…あっ俺、陸上部入ろうかな」
進が突然言い出した。
「えっ?陸上やるの?」
「うん、やろうかなと思ってね、てか辞めるなんて言わないで俺と一緒にやらない?一人で行くのやだよ〜」
「なんでそうなるんだよ…俺はやるつもりはない」
「そんな事言うなよ〜」
進は瞬を結構真剣に誘っている。
「ま、まぁ…考えとくよ…」
キーンコーンカーンコーンキーンコーンカーンコーン
チャイムが鳴り、先生が教室へ入って来た。
「はーい皆さん、HRを始めますよ。今日は自己紹介や部活動の説明などを聞くだけです。では特に注意事項もないのでそろそろHR終わります。あと一限はこの教室で行うのでそのままここに居てください」
先生はそう言いHRを速攻で終わらせ教室を後にした。先生が居なくなってからしばらくして、進が喋りだした。
「一限は自己紹介かー…まぁ、当たり前か、最初の授業だしな」
「たしかにね…てかクラス替えとかでも最初の授業はだいたい自己紹介からだね」
「ああ、俺の中学ではそうだったな…。てか自己紹介って何話すの?」
「何を話すかは知らないが、多分さ出身校や趣味とかの事じゃない?」
「それくらいなら全然いけるなー!」
「いや、何がいけるんだよ」
「自・己・紹・介」
「いや、自己紹介とかどんな事を言えと言われても出来るだろ?」
「そうなの…お前凄いな。俺はすぐ緊張しちまうから、自己紹介は苦手なんだよな」
「そうか、それなら頑張れよ」
「頑張れって言ってもよ!緊張は取れないって!」
キーンコーンカーンコーンキーンコーンカーンコーン
進と瞬が話しているとチャイムが鳴り、先生が教室へ入って来た。
「では一限始めますよ~じゃあ君、号令かけて」
先生は近くにいた生徒に号令がけを指示した。
「ぼ、僕ですか…?」
生徒は戸惑いながら言った。
「はい、そうです。ほら、もたもたしないで!」
先生は生徒を急かした。
「き、起立…気をつけ、お願いします。」
「お願いします」
号令をした生徒に続き他の皆も礼をした。
「はい!じゃあ、いきなりだけど自己紹介をしていこう!じゃあ俺からだな、俺は"早崎颯助"です。教師歴四年です。どうぞよろしく!じゃあこの様に名簿順で自己紹介していって。じゃあ君から」
「……」
「……?どうした?自己紹介しないの?」
「い、いや…何を話せば…」
「ああ、じゃあ出身校と入ろうと思っている部活動、又は入ろうと思っている部活がない場合は中学の時やっていた部活とかを言ったらいいよ」
「は、はぁ…じゃあ行きますよ、上町中から来ました青山裕太です。高校ではバドミントン部に入ろうと思っています。よろしくお願いします。」
「はい、よろしくね。ほら皆拍手!」
パチパチパチパチパチパチパチパチパチパチ
この様にどんどん自己紹介は進んでいき瞬の番が来た。
「はい、じゃあ次の子」
「はい、小山中から来ました嶋町瞬です。中学の時は陸上部でした。よろしくお願いします。」
パチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチ
瞬の自己紹介も終わり、進の番が来た。
「東山中から来ました時田進です。高校では陸上部に入ろうと思っています。よろしくお願いします。」
パチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチ
そうして進の自己紹介が終わり、しばらくして瞬が見たことあると感じた奴の自己紹介になった。
「内田中から来ました"音越雄斗"です。中学では陸上部でした。よろしくお願いします。」
瞬は音越の名前を聞いたらモヤモヤが晴れた。そうあいつ音越雄斗は中二で全中に出場した凄い奴だった。だが中三になって突然名前を聞かなくなっていて、瞬も彼の事を忘れかけていた。そうしてしばらくして全員の自己紹介が終わった。
「全員、自己紹介終わったか?」
何人かが頷く。
「そうか、じゃあ俺は職員室に戻るは、じゃあ次の時間は体育館集合な」
そう言い先生は職員室に戻っていった。先生が職員室に戻ってから少ししてチャイムが鳴った。
チャイムか鳴り各々トイレなどに行く中、瞬は進に話しかけた。
「なぁ進、あの音越雄斗って奴めちゃくちゃ速い奴だぞ」
「何!?そうなのか?まぁ確かに中学では陸上部でしたって言ってたな」
「ああ、俺も中学の時に何回か一緒に走っているがあいつの走りは周りを圧倒する走りだった…とても追い付けるもんじゃなかった。」
「へーそんな奴が同じ学校にいるのか!でもさ…その音越くんって高校で入りたい部活で陸上部を言った訳じゃないよな?だて中学時代の事を言ったもんな」
そうだ、確かに音越は入りたい部活ではなく、中学の時にやっていた部活について言ってた。
「確かにな…」
「てか、瞬も中学の部活の事言ってなかったか?お前は高校でも陸上部だぞ!」
「は、は…」
どうやら進によると瞬の陸上部入りはもう決まっているようだった。
「てか、お前が陸上部に入るのはいいが、俺は部活動紹介を見てから入るか決めるぜ」
「いや無理」
「えっ…?」
何故か断られた
「瞬、お前が陸上部に入るのは俺がお前に話しかけた時から決まっていたんだ」
「そうなんだ…」
「ああ…。てかさ次の時間体育館か?」
「急に話変えたなぁ!まぁそうだけど」
「それにここに居て良いのか?」
「そりゃいいだろ?さすがに先生来るだろ、だって体育館の場所だって入学式とかでしか言ってねぇし、まずだいたい入学して最初の登校日の授業では先生が案内してくれるもんだろ。」
「まぁ普通はそうだ…でもあの先生確か、体育館集合って…」
キーンコーンカーンコーンキーンコーンカーンコーン
チャイムが鳴り、しばらくして放送があった。
「一年四組の生徒は直ちに体育館に集合しなさい。繰り返します。一年四組の生徒は直ちに体育館に集合しなさい。」
クラスの大勢が驚いた。
「体育館集合ってまじだったの!?」
「どういくんだよ!」
「いや入学式の時の教室に来たルートでいける。」
「まぁいい、行くぞ!」
そう言いクラスメイトの何人かは体育館へ向かった。
「俺たちも行くか」
「ああ…そうだな」
先に向かったクラスメイトを追うように二人も体育館へ向かった。
〜体育館にて〜
皆が体育館に着くと早崎先生が言った。
「おいお前ら!初っ端から遅れるなよー!まぁ早く並べ」
早崎先生が列を並ばせた。
「よし座れ」
そうしてしばらくして、部活動の説明が始まった。この高校一番の人気スポーツ、サッカーから始まり野球、バスケとどんどん紹介は進んでいく。部活動紹介の中にはその部活でどの様な技をやったりするのかなどを実演したりする部活もあった。そうしてしばらくして陸上部の紹介が来た。
「皆さん、こんにちは!陸上部部長の"新道大雅"です。まず我が東山高校陸上部はトップを目指しています。しかし今年は部員が自分含め三人しか居なくこのままではトップを目指すどころか廃部になってしまいます。どうか俺と一緒にトップを目指したいと言う方!陸上部に入ってください!初心者や別にトップを目指さないって方でも大歓迎です。」
そう言い陸上部の部長は下がって行った。そのまま運動部の説明が終わり文化部の説明も終わった。
そうして教室へ戻った後、進が瞬に話しかける。
「なぁ瞬、トップを目指そうだってよ!かっこいいな〜トップ」
「ああ…トップか(俺も中学の頃はトップを目指し日々陸上へ取り組んでいたな…)」
「ねぇ瞬、トップ目指さない?」
進がいきなり言ってきた。
「俺は…トップに立つことを諦めたんだ…」
瞬は小さな声で言った。
「いいや…けして君は諦めていない。」
「何?…なぜそう思うんだ?」
「いや…なんか陸上の話をする時のお前の顔が他の話をする時よりも楽しそうに見えるからかな。」
「え、まじで?陸上の話ししてる時、楽しそうだった?」
「ああ、目が生き生きしてる」
「まじか…」
「なぁ瞬…陸上やりたいんだろ?正直に慣れよ〜」
「ん…わかったよ!やってやるよ!お前とトップを目指してやるよ!」
「君たち、トップトップってうるさいよ。トップなんてそんなすぐなれるもんじゃないのに…」
そこには音越雄斗がいた。
「どうしてそんな事を言うんだよ!分からないだろ!」
進が音越に言い返した。しかし音越は少し笑いながら言った。
「トップを目指したいなら目指せばいいさ、ただしトップへ行く資格を得ることが出来るのならな、せいぜい頑張れよ」
そう言い、音越はその場を去ろうとした。しかし瞬が声をかけた。
「なぁ音越君、君は陸上を辞めたのか?勿体ないな…君ほどの実力がある奴はなかなか居ないのにな…」
音越は少し驚きながら言った。
「君は俺が陸上をやっていた時のことを知っているのか?」
「ああ、知っているさ…お前とは何度か走ったが一度くらいしか勝てなかったからな、忘れはしないさ…(あいつが自己紹介で名前を言うまで忘れかけてたけど…)。」
「てかさ、お前そんなに速かったならなんで陸上やめちゃうの?」
進の問いかけを聞き、少し黙り込んでから言った。
「別に、君らに言う必要は無い…」
音越はそう言い別の所へ行った。
「なんだ…?あいつ」
「さぁな、俺にも分からん…。てか急に話変わるけどさ、お前は、さっきの会話でいきなり陸上やりたくなったの?」
「いや、別に急って訳でわないんだ、俺には陸上をやってる兄が居るんだが、俺はその兄の影響で陸上をやりたいなと思ったんだ。」
「へーそうなんだな、俺はてっきりお前が走るだけで楽そうだからとか思って入りたいって言ってるのかと思ってたー」
「んなわけ!てかスポーツはどんなのでも真面目にやれば楽なわけないだろ!」
〜一気に時間が進み放課後〜
「じゃあ、部活見に行くか!もちろん陸上ーー!」
「ああ、そうだな」
瞬はテンションが高い進について行き、陸上部の部室へと向かった。そして陸上部の部室に着くと進は立ち止まった。
「おい進、早く開けろよ」
「いやまて…まだ心の準備が…」
ガチャン
「へぇ?」
進がドアの前で緊張して立ち止まっていたら、突然ドアが開き、中から人が出てきた。
「ん?君たち見学?」
「うっす!見学に来ました、嶋町瞬です。」
「あっ、うっす!同じく見学しにました、時田進です。」
二人が自己紹介すると部室の中から勢いよく出てくる人がいた。
「見学だってーーー!」
そう、この部の部長新道大雅先輩だ
「おい、大雅!一年生が怖がるだろー!」
「おう、これはすまなね!ほら入って入って。」
そうして二人は陸上部の部室に入った。部室に入った途端、先輩の顔が真剣な顔になった。
「で君たちはなんの種目をやるんだ?」
「100mです。」
「100mかー!いいね~、で君は?」
「俺は100、200mです。」
「二人とも短距離!!これであと一人、短距離志望の子が入れば念願の短距離だけのリレーチームが出来るぞーーー!」
先輩の真剣な顔は喜びの顔へと変わっていた。
「そうなんですね…。」
「ところで、君達は陸上経験者?」
「俺は経験者で、進は未経験者です。」
「そうなんだ~、まぁ未経験でもこれから楽しく頑張ろう!」
「はい!」
「おい大雅、そんな強要みたいな言い方やめろ、まだ入るとは言ってないぞ。」
「えっ?そうなの?」
「ああ、…てか進君、君もそんなすぐ「はい!」とか言っちゃだめだよ。それだともうこの部に入る事を決めてるようになるから。」
「はい!もうこの部に入る事は決めています。俺と瞬は」
「えっ?まじ?それホントー?」
「はい!」
「あ、はい(俺は言ってないんだけどな…まぁ入る約束は、しちゃったからね)。」
「やったね!理真!」
「ああ、そうだな。」
ガチャン
色々話していると部室に誰か入って来た。
「うっす!なんか部室のドアの前に一年がいたからつれてきたよ」
そう言い陸上部部員の先輩が俺たちとは別の一年を連れて入って来た。
「うっす、愛斗!おー!!また増えたね〜」
大雅先輩が嬉しそうに言った。
「ん?…まさか大雅、そこに居る二人って?」
「ああ、新入部員だよ!」
「新・入・部・員!!…いやまてよ、まだ入部するって決まったわけじゃない…」
「いや!この二人はもう陸上部に入ると言っているんだ!てことは仮入部だろうが見学だろうがそれはもう入部と変わらない!」
「所で君は?」
「はい!僕は"山岡路気"と言います。部活動紹介を見て見学しに来ました。」
「あ、あれで?」
先輩二人が驚く
「はい!トップを目指すという言葉に惹かれました!」
「君は経験者かい?」
「はい、一応経験者です。」
「ほーん、種目は?」
「一応100、400mです。」
「100と400!?つまり短距離…。いやった!!これで短距離チームのリレーが出来る!!」
「いやだから、入るとは…」
「いえ、他に特にやりたい部活がないので入ろうかなーと。」
「まじで!?見学だよ?強要じゃないんだよ?別に嫌なら嫌でいいんだよ…?」
「いや、特に嫌ではないです…。」
「頼もしいね!じゃあこれから俺達が目指す場所を目指して頑張ろーー!」
そして部活が始まり、しかしその日は一年生の誰も運動着を持ってきて居なく見学だけで終わった。
〜部活終わり〜
「どうだった?部活?」
「楽しかったです。」
「まじで?それはよかった!」
「じゃあ、これからも頑張ろー!」
「おー!ちゃんと部員来たんだなー」
誰かが来た。
「うっす!」
先輩たちが言ったので、俺達も言った。
「うっす!」
「うっす!どうも東山高校陸上競技部顧問の早崎颯助だ!よろしくな!」
まさかの陸上部の顧問が担任だった。
「うっす!よろしくお願いします。」
「ん?てか君たち二人って、俺のクラスの奴だよな?」
「はい、そうっす」
「だよな〜!確かに陸上部に入るって言ってる奴が居るな〜と思ってたんだよ。」
「じゃあ、皆よろしくな!」
「だから…まだ入ると決まって…」
「どうした理真?彼らはちゃんと入ると言ったぞ」
「君たち!ほんとに入るんだね?信じていんだね?」
「はい!」
「よし、なら分かった!皆今日から陸上部の部員だな!」
「はい!」
「そう言えば、俺達の自己紹介をしてなかったよな!俺は"飛田理真"って言うんだ。それでこっちのが…」
「まて、言うな!後輩への自己紹介くらい自分でやらせろ!」
「ああ、分かったよ」
「ゴホンッ…俺の名前は長池愛斗って言うんだ。よろしくな…。」
「それで俺が部長の新道大雅だ!皆これからよろしくなー!」
そうして少年は今日、再び目指す目的が出来た。
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