第9話

それは診療台の足へと固定されていて、身動きしようにもできない苛立ちが彼女から伝わってくる。




「ふざけるのはやめて頂戴。これのどこが診察ですって?」


「ふざけているのは君だろう。なんで今日は松葉杖も持たず、包帯も巻いていないんです?」


「……それは、邪魔だったから、」


「……へぇ?」




いつものように、しかしいつもとは違い少し怯えを滲ませて告げる彼女に僕はニヒルな笑みを浮かべる。





そのまま無防備な脚へと手を伸ばすと、――――それを思いっきり高く持ち上げた。




「いっ、たい!!痛いわ!!やめて!!」


「痛い?そうなるようにしたのは君だろう?」


「……っ」


「僕は何度も言った。このままじゃ治らないよって。でもその忠告を無視し続けたのは君です」




そうだろう?と僕が尋ねると、彼女は悔しそうに唇を噛み締めた。





……また、だ。



彼女のこの表情を見ると、僕はいつも身体が鉛のように動かなくなる。

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