第2話 えんどろーるは

雨の日には雨の中を

風の日には風の中をあるいた*

千年も一年もかけがえのないものだと知っていたから

ダンスには念入りに心をこめた

私の名前は寧音と言います

平凡な生活を送っていますが

けして易い日々ではないと思っています

いつからだろう、この苦しみが

なつかしい方角からくる風のようだと思い始めたのは

事実、風が吹きまくると私はうれしかったし

そのせいでコートが膨れるのも悪くはなかった

寧音という名前には音という字がはいっていますが

両親の意向とはおそらく外れて私は

烈しいはげしいロックが好きです、聴くのは、ですが

詩は相田みつをくらいしか読んだことがありません

けれど私自身が詩だと知っているので別段ふべんはありません

雨の日には雨の中を

風の日には風の中を

という詩句を謎に覚えています

美しいという言葉が嫌いで

どこか安っぽいと思ってしまいます。


(海辺にはきらきらとひかりの粒

 きれいだね、おもいだすね、ごらん、私たちはここからきたんだよ

 今日は私の出自について踊りたいと思う

 霞のようにぼやけていく私の過去を

 波が寄せてくるまでに百かい物語りたいと思う

 人を愛し、人を憎みました

 人を愛し、人を憎みました)


(どこまでもどこまでもえんどろーるはえれきぎたー)






*相田みつを『雨の日には雨の中を 風の日には風の中を』(文化出版局)より引用

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