第2話

――…桃歳は、婚約の儀式の中心となり、自分の身を、百年炎樹に捧げる事を誓いました。


 桃歳は、美しい衣をまとい、目隠しをされ、桃歳を乗せた馬は、民衆の間を縫って国の中心部から離れてゆきました。


 日が傾き、夜を迎え、桃歳を率いる一行は、山を登ってゆき、朝を迎えました。


桃歳の目隠しがはらりと取れた時、桃歳を運んだ者が、桃歳の正面でお祈りの言葉を唱えていました。


「どうぞ、狼や熊や、雪女、雪の精には、喰われんように気をつけてください。


いずれも、人に化けて人に近づくと云われております。


大木を見つけたら、術をかけて下さい。


あなた様が大木に取り込まれた時、次の百年間生きる、新しい種ができます。


その時こそ、大木の炎を抑えることになるでしょう。


民のために、あなた様のお力が何よりなのです。」


桃歳はすべてを承諾し、桃歳を運んだ者たちは、そそくさと山を下りてゆきました。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る