第6話

「弾く前に感じるの」

そう言って、香音にピアノ前に少し外で遊ぶ事を勧められた。


外で遊ぶと、

いろんな音が聞こえてきた。


小鳥のさえずりに

草を踏む足音に

木々をすり抜ける風の音に

耳を傾けた。



――ぼくは、気持ちに変化が表れた。


ピアノをポーンと1音弾いた。


―…しみわたる。



ぼくの曲をあらためて弾いてゆくと、欲しかった音にたどり着く。



ぼくが…


テクニックだけを追い求めていたぼくが、

曲に躍動感をつけ、


ぼくの手から、指から、感情だけの化け物を生んでいった。


・・・・・最高だ。


…そして、それを窓に肘をついて聞いていた香音が、ぼくに言った。



「顔つき・・・、かわったよね。」と。

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