永遠のともだち

餅月 響子

友達以上ってなんだろう

それは、花のようにしんしんと雪が降る季節だった。


私は、中学生の頃から気になる人がいた。

中学を卒業しても、頭の中にちらちらとよぎる。

卒業式の日にまともに会話したような気がする。

今までずっと同じクラスだったが、会話という会話はしたことがなかった。


彼はクラスの人気者。

男女分け隔てなくたくさんの人に囲まれていた。

仲良い友達からは良い評判を聞かなかったが、ちょっと気になる存在だった。

とある私自身好きな少女コミックのキャラクターが彼も好きだという情報を聞いた。同じ趣味なんだと少し嬉しかった。


少女コミックの某人気アニメ映画館の行列で遠くから友達グループと来ていたのを見たことがあった。


卒業式の体育館脇で並んでいるときになぜか声をかけられた。

陰キャラである私は陽キャラとの接点は少ない。女子1軍とのかかわりももちろんない。何でか、同じ趣味だからか興味を持たれて、苗字ではなく名前を呼ばれてしまう。不思議な感覚だ。手を振られる始末。


どうしようと焦った。


別に嫌いではなかった。ニヘラニヘラとお辞儀をして、軽く交わしていた。

たったそれだけのことで私は心を鷲掴みされた気がする。


◇◇◇


中学を卒業して、高校入学して間もなくの頃、彼とは違う高校に通っていた。

住んでいる地域は一緒のため、下校途中に見かけることもあった。


高校でできた友達に好きな人はいるかの話になり、片想いだと伝えるとそれは言うべきだと言われて、卒業アルバムにあった住所から探し出し、手紙を書く決意をした。いわゆるラブレターだ。


文面は覚えていない。

想いをつづった。当時おりたたみ携帯を持っていた。

メールアドレスを記入して、返事をここに送ってもらうよう書いていた。


待てど暮らせど、ずっと返事はなかった。


友達に相談すると、忘れているかもとか、忙しいんだと言われ、もう一回送ってみなよとアドバイスされた。私は言う通りにして、もう一度手紙を送る。


すると、何週間か経って、まさかのメールが彼から返事が来た。


『今は、付き合うとは無理だけど、友達でいることはできる』


 そんなメールだった気がする。


 そもそも会話もそんなにしたことないのに、交際を申し込んだ自分もおかしな話だ。自分でも何を考えていたのかわからない。友達から始めましょうで十分だった。フラれたことは事実だったが、友達でいいというところに救われた。鼓動が早まるのがわかった。本当にいいのだろうかと携帯の持つ手が震えた。


 しばらくして、

「誰とも付き合ってないなら、出かけるくらい大丈夫っしょ」


という友達の言葉を鵜呑みにして、付き合ってはいないが、一緒にでかけようというお誘いメールをした。まさかのOKとされて、カラオケデートに行くことになった。


陰キャラな私がなんでこんなガツガツしているのだ。見た目もそんなに明るくない。ごくごく普通の感じ……と自分では思っていた。でも、こんな身なりの人でもカラオケに行ってくれるなんて嬉しいことだと背中に羽根が生えた気分だ。



 友達関係のデートの初日は、白い息が見える寒い日だった。


 駅の待合室で待ち合わせして、約10分間、電車に乗り、駅に近いカラオケ屋に行った。 歌った曲はなぜかTOKIOの「フラれて元気」という告白した相手に歌うよくわからない人でした。ひどい人だったかな。失礼だったかな。彼は、困っていた気がした。約1時間前後のカラオケで何を歌ったかそれしか覚えていない。終始、緊張していた。


 たまたま来ていた同校の生徒に見られたくないと、私が会計をすることになり、お金を渡された。割り勘だった。それは問題ないですが、なんでお支払いしないといけないのか。ちょっと理解に苦しんだ。モテる方だから、隠したいことがあったのだろうかと考えた。


 たった1日のデートがこんなに鮮明に思い出せるなんて、片想いだからこそ、貴重な経験なんだなとしみじみ思った。


 その後も何日かメールのやり取りは続いた。

 

 恋人はなれないけど、永遠のともだちだと優しい言葉を送ってくれたが、私に振り回されなくていいよと自然消滅させた。そういう関係性で終わった。こんな私より釣り合うもっといい人いるはずだと自信をなくした。


 数年後の成人式では何事もなかったように何の会話を取り交わすことはなかった。スルーしたことで元の陰キャラと陽キャラの空気の存在になっていた。今でも接点はない。


 それでも、その一日だけのデートで良い高校生の想い出になった。


 もう接点を持つことはない。

 でも、心の中では友達以上恋人未満だ。

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永遠のともだち 餅月 響子 @mochippachi

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