星売り代行

皐月トオル

星売り代行

 なのでね、星を売ろう、と思いました。ええ、少しは迷ったんですけれど。 ですから、あなたさまにお願いしたのです。

「そうだったのでございますね、この度はご利用ありがとうございます。それで、売却を考えていらっしゃる星について詳しくお願いしますね」

 そんなに大きなものではないんですよ。だいたい、そうね、こちらのコップに入ったソーダくらいでしょうか。大きくはないですけれど、とても美しいです。雨が降るとね、きらきらと輝いて、地面の桃色が壁なんかに反射して、それはもうきれいなんです。

「かたちはいかほどでしょうか。こちらのようなね、きれいな球体のものをいちばん高い値段で買い取らせていただいているんです。形がいびつになるにつれて段々と値段が下がってしまうのですが。いかほどでしょうか、いかほどでしょうか。もちろん形だけで値段は決まりませんが」

 それがね、丸くないんですよ。直方体、というのも少し違うでしょうか、ちょうどお豆腐の角をとって危なくないようにしたような、そんな感じなのですよ。

「ほう」

 星というのは不思議なものですね。およそ星とは言えないような形なのに、断固として星以外の呼び名は認めない、むしろはねつけるような雰囲気を纏っているのですよ。誰がなんと言っても、星、なのでしょうね。

「これまでに様々な形の星を買い取らせて頂きましたが、直方体というのははじめてだ。五芒星をまるごと飲み込んだようなものはありましたが。これは興味深いですね。是非とも買い取らせて頂きたい。」

 あら、随分話が早いのね。よろしいのですか? 実際にご覧にならなくても。よろしいのですか?

「持ち運ぶにしろ、安置するにしろ、色々と準備が大変ですからね。うちでは基本的に現物を見ずにお客様を信用する、と決めているのです。そもそもうちのお店にいらっしゃることができる時点で、皆様相当な方ですから」

 それもそうね。さて、おいくらくらいになりますか?

「お客様の仰る事をおまとめすると、大体こちらくらいかと」

 あら、もうすこしはいくかと思ったけれど。仕方ないですね。小さいですし、まるくないですからね。

「お客様のご星の場合ですと、誰か他のお客様がこのご星をお買い上げなさった場合、そのお値段の二割をお客様の方に後日お送りする、という形になると思われます。なんせ初めて見る形ですから、私たちも吟味しなくてはならず。申し訳ありませんが、こちらに提示したお値段は、取り敢えず、でございます」

 そういうことですのね。わかりました。ではそちらでおねがいします。

「かしこまりました。少々お待ちくださいませ」

 …

「お待たせいたしました。こちらご確認くださいませ」

 …確認いたしました。ありがとうございました。どうか良い方に巡り会えますよう。

「尽力いたします。この度はありがとうございました」

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星売り代行 皐月トオル @satuki_tooru

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