11.探偵事務所での対面
探偵事務所のドアを開けると、鈴木がすぐに声をかけてきた。
「高橋さん、こちらです。写真と動画ファイルを準備してあります。」
狭い応接室に通されると、鈴木はパソコンのモニターに映る映像を静かに再生した。そこには、深夜のラブホテルの駐車場に停まる黒いセダンと、車から降りる圭介と女性の姿が映し出されている。
「この女性ですが……顔がはっきり分かる瞬間があります。ここです。」
鈴木が一時停止した画面を見た瞬間、私は息を呑む。映っているのは間違いなく美咲だ。照明でやや暗いが、その髪型と雰囲気は私が何度も見てきた親友そのものだった。
「やっぱり……。」
声が震える。怒りと悲しみが再び湧き上がってきたが、私は歯を食いしばりながら平静を装う。
「圭介の顔も、はっきり映ってますね。」
「はい。二人がホテルに入ってから出てくるまで、時間もしっかり記録できています。次に、車のフロントガラス越しに会話しているらしい映像も撮りました。音は拾えていませんが、イチャついているようにしか見えませんよ。」
鈴木は淡々と説明しながら、別の画像ファイルを開く。それにはホテルの入り口付近で腕を組む二人の姿が鮮明に写っていた。
「これなら、浮気の動かぬ証拠になります。裁判でも有利に使えますよ。」
私はぐっと拳を握りしめる。
「ありがとうございます。ただ、これだけで終わりにはしないつもりです。」
鈴木は意外そうに眉を上げた。
「というと?」
「私は二人に社会的な制裁を与えたい。会社でも評判を落とし、周囲からの信頼を失わせたいんです。それくらいのことをしなければ、私の気が収まらない。」
そう口にする自分が、冷酷だと分かっている。でも、圭介と美咲が言い放った言葉の数々を思い出すと、許す気には到底なれない。
「そうですか……。分かりました。でしたら、会社関係の情報も探ってみる必要があるかもしれませんね。ご主人の仕事の取引先や、奥様のご友人(浮気相手)の職場での評判など。何か不正があれば暴露できるかもしれません。」
「そうですね。できる限りのことをお願いします。」
私はそう言い切った。ここまできたら徹底的にやるだけ。幸い、鈴木はプロであり、私と同じく冷静な視点で状況を見てくれている。彼の協力を得られれば、かなり強い証拠を集められるだろう。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます