完璧主義者、スーパーメイドに転生する
あまりゅう
プロローグ 堕ちた完璧主義者
休日の朝、コーヒーを片手に思考に耽る。
俺の人生は経歴だけ見ればとても素晴らしいものだろう。
医者の家系に産まれ、高校は県内TOPの私立高校、大学は国で1番と言われる国立大学へそして今は外科医として働いている。
しかし、ふと思う。本当にこれで良かったのかと。
テーブルに置いてある飲みかけのコーヒーに口をつける。
冷めた液体が喉を通っていくのが感じられる。
今年で30になる。俺もそろそろ結婚相手を探さなければ完璧な経歴に傷がついてしまう────
完璧ってなんだっけ・・・
最初はただの負けず嫌いだった。他人より劣っていることが許せない。とても傲慢で世間知らずの考え方だ。しかし、それが許されるくらいには勉強ができ、運動ができ、素行も良かった。
思えば最初に狂い始めたのは高校の、選択授業の時かもしれない。選択しなかった分野は当然ながら選択した者に劣る。
そのことに仕方がないと思ってしまった自分がいた。
初めての妥協である。
この頃には完璧を目指す心は、完璧に見られたい願望に変わっていた。
完璧に見られたいが故に、深入りされることを恐れ、仲がいい止まりで終ぞ親友なるものもできなかった。
そうして変に高くなったプライドは大学受験、そして大学での学友により打ち砕かれた。
空になったマグカップをテーブルに置く。もう1杯くらい飲みたいところだったが、生憎コーヒー豆を切らしてしまったのでそれは叶わない。
切らしたままにしておくのも気分が悪いので行きつけのコーヒーショップに買いに出よう。
俺のダメなところはよく分かっている。「完璧にする」という漠然とした理念を掲げ、明確な目標を持たないことだ。
何か具体的な目標を考えてみよう。
目標貯金額を決めるとか?
独立して病院を運営するとか?
そんなことを考えながら歩いていると不意に足が空を切る。
階段だ。それも下りの。
ゴロゴロとある意味完璧な転がりかたをして最下部に到達した。
意識が朦朧とする。
最期に目にしたのは自身が転がり落ちた灰色の汚れたコンクリートの階段だった。
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