第45話:皇子達へのお誘い
17日の出航後は大きなトラブルもなく、ひとまずは順調な航海を続けていた。
ラーク達も、帰還後に本国で行われる会議に備えた資料作りを終えた後は定時報告以外に特段する事もなくなっていた。
出港して3日経過した9月20日の朝、ラーク達は道中の暇をつぶすために結構な頻度でトレーニングルームに入り浸っていた。結構しっかりした設備のトレーニングマシン達だ。
ラークは大胸筋を鍛えるためにチェストプレスのウェイトを限界まで積み上げガンガンに動かしている。
キャメルはラットプルダウンで背中をガチガチに鍛えている。
アヤメはただでさえ美しくバキバキな腹斜筋をロータリートーソで締め上げている。三人が三人共思い思いのトレーニングをしながら会話を交わしていた。
「キャメル、退屈してないか?」
「あぁ、確かに。アヤメは?」
「右に同じ。体脂肪10%切ってるし絞りようがないレベルまで来てる。」
「・・・じゃぁ、道場で組手でもやる??」
ラークが期待半分呼びかける。
「えー・・・暴れすぎて壊さないでよ?」
アヤメがマシンに没頭しながら適当に応える。
「確かに、旗艦の設備壊したらシャレにならないからなぁ・・・」
苦笑しながらこちらも適当に応えるキャメル。
「・・・退屈だなぁ・・・」
次のマシンに移動しながらラークが残念そうにつぶやく。
再びしばらくの沈黙が流れ、3人はマシンを変えながら黙々とトレーニングをしていた。
「そう言えば、本国への到着いつだっけ?」
アヤメが二人に聞いてみた。
「確か・・・大将の命令で領海と各諸島を警戒しながらの航行だから・・・」
「早ければ10月1日、遅くとも5日前後には到着予定だ。覚えておけよ・・・キャメル。」
「あぁ、そうだったな。本国から来たときは10日くらいだったか?帰りは長めだな・・・それで、どうした?」
「10月、収穫祭があるじゃん。」
アヤメが楽しそうに声を弾ませる。
『あ・・・』
ラークとキャメルがハモり、大事なことを失念していた自らに気づく。
「ね?収穫祭!」
アヤメが二人の記憶を呼び覚ますかのように楽しそうな声を投げかける。
「あぁ、そうだった。収穫祭が間もなくか・・・当然、軍も準備に大忙しだろうな。」
キャメルが期待を抑えきれないという表情でアヤメに問いかけた。
「もちろん!毎年軍部も協力してるもんね。アレもやるみたいよ。どうする?」
「ひとまず・・・せっかくだから皇子達をここにご招待しようか・・・」
ラークがにやりと笑った。それはさながらあくどい笑顔と言うよりは、楽しいいたずらを思いついた少年の様であった。
『意外とこういうの好きだからな・・・』
キャメルとアヤメが内心で笑みを浮かべながら同じく
1時間後、ミチミチにパンプアップしたラーク達の前に、退屈していたであろう皇子達が『面白い事でもあったの?』とシベリアンハスキーの様な表情でラーク達の船に到着した。勿論ウォーロックをお供に。
今回の騒動を通じ皇子達からは三人がだいぶ慕われる結果になった事で、正直な所ラーク達もホッとしている部分はある。
皇子達のお供としてついてきているウォーロックは『他国の皇子を呼びつけるとは何事か!』と言う思いが若干あったが、ラーク達の話を聞いてその考えを少し改めた。
曰く『10月から収穫祭が1か月行われる。そこで軍のイベントの一環として行われる『鍛錬披露祭』に出てみないか?』との打信であった。
「無理にとは言わないが、この時期本国では収穫祭が行われる。10月の1か月を丸々収穫祭としてのイベントが開催される。首都のカナビスは勿論だが、我が国全土で一年の収穫を祝って執り行われる。その中で行われるこのイベントに皇子達も出てみないか?・・・と言う話なんだ。」
皇子達への大雑把な説明をラークが行う。
「陸軍・海軍・海兵隊の3軍から優れた兵達を選抜して、トーナメント形式の組手大会や武術と魔法の技術を競う大会が毎年行われているんだ。」
キャメルがラークの話を補足する。
「そこで、皇子達が嫌でなかったらカナビスにつくまでの間にこの艦で過ごして貰って、訓練して大会に出てみない?・・・って案内なんだけどね。無理しなくてもいいからね。」
アヤメが幼い皇子達を気遣う。
「先日、的当てでの魔力解放を見て、もしかするとと思っていたからね。出てみたいならでいいからやってみるかい?」
キャメルがあくまで軽く語り掛けるように3人に語り掛ける。
「ちなみに、民間からの参加もオープンだし、民間人でも優秀な成績だと軍にスカウトしたりすることもある。それと、毎年変わるが商品も豪華だ。」
ラークが笑いながら皇子達に追加で説明した。
3兄妹は顔を見合わせ、『どうしようか・・・?』と言う雰囲気ではあったが、ウォーロックの言葉が彼らの意思を決定した。
「それは殿下付きの私でも参加できますかの?」
まさか帝国准将自ら参加すると言い出すとは思ってもいなかったラーク達。
「よろしいので?」
やや驚いた声でラークが問いかける。
「無論。殿下、折角ですので経験として遊んでみてもよいかと存じますが・・・」
ラーク達の気遣いを既に察しているウォーロックは、優し気な視線を皇子達に投げかけ、オーガストは決断した。
「准将がそういうのであれば、出てみてもよいか・・・妹達も参加するが当然構わないですよね?」
オーガストの問いにラークが否やもなくOKを出す。
「それでは、首都到着まで本艦にてトレーニングに励んで頂きたく存じます。」
「承知した。」
硬い返事に見え隠れする期待感のこもった皇子達の言葉に、収穫祭へ参加するべく稽古をつける意思を固めたラーク達一行であった。
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