ルーティーンワーク

鈴里ゆゆ

ルーティーンワーク

変わり映えのない景色。


舗装され、歩きやすく整備された道。周りには青々とした木々が生え、その根本には花まで咲いている。あれはパンジーだろうか。よく見かけるような花が寸分の狂いもなく並んでいる。きっと町の誰かが植えたのだろう。


もう何度この道を歩いたのだろうか。


歩くスピードはそのままに、私は深くため息をついた。このルートしか歩けないとはいえ、さすがに毎日全く同じ景色だとうんざりもする。


変わり映えのない道。何かがあるとすれば野生動物が顔を出すか、町人以外の旅人を見かけるくらいのものだ。


時折顔を出す野生動物も可愛いもので、ほとんどがうさぎや猫のような小動物のみだ。


森の中には大型の動物もいると聞くが、生憎私のようなただの町人は森に入ることなどできないし、入ろうとも思わない。


結局は毎日毎日同じ道を、毎日毎日なんの変化もなく歩くしかないのだ。


 

 いったいこの道を歩き始めて何年になるのだろうか。はっきりと覚えていないが、物心ついた頃から歩いていたに違いない。


楽しくて歩いているわけでも、ダイエット目的で歩いているわけでもない。


歩かなければいけないのだ。


野生動物が出ようとも、旅人が話しかけてこようとも一切表情を動かさず、歩き続ける。


それが私の役割だからだ。


もしも旅人から話しかけられた時も答える言葉は決まっている。


「旅の方ですか。この先はサラカ町です。」


「宿屋はあるかな?」


「旅の方ですか。この先はサラカ町です。」


「なんだよ、モブかよ」


旅人は私に2回話しかけると途端に興味を失ったように去っていった。


旅人から私はよく[モブ]と呼ばれる。きっとそれが私の名前なのだろう。


私は今日も道を歩く。

 

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ルーティーンワーク 鈴里ゆゆ @yun0803

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