文芸部の日々

虚偽 雹

第1話 文芸部の創立

 高校入学。

 こうしてみるとおめでたい事なのだろう。しかし、興味なかった。

 偏差値が高くないとしても高校入試や面接は面倒だった。こんな風に言ってしまえば傲慢な人間と思われるが、この市立結月高等学校、通称結高に受かる自信があった。だから、合格発表の時も「あぁ、受かった」程度でしかなかったのだ。目標もない、やりたい事もない、とりあえず平穏に過ごしたい。


 それだけだった。


 入学式の長い校長先生の話も終わり、自己紹介も終わり、授業スタートしたぜイエーイ。ハハッ。

 そんなこんなでしばらくたったある日の放課後。

「お前ら何処の部活入るー?」

「俺はサッカー部」

「オレは今年から陸上部だな」

「私はテニスー」

「バレーボール」

 声がでかいから耳をすませなくても聞こえてくる。男女共にこの時期は活気がある。それも仕方がないこと。だって部活動勧誘期間だもの。

 5、6時限目を使って行われた部活動紹介。なので放課後は必然的に部活の話になる。実際に今日から部活動体験期間が始まる。

 特にやりたい事はないが入る部活は決まっていた。


 文芸部


 その部活に入る予定だが問題が一つ。いや、別に大事ではない。

 部員がいないこと。誰も入る人がいないと今年で廃部が決定するらしい。それを文芸部の顧問になるかもしれない瀬波先生に聞いた。ただ、他にも文芸部に入る予定の人は2ぐらいいるらしい。先生的にはもう1人ぐらい部員が欲しいと言っていた。

 しかし、今日はもうやることがないので帰宅するのだった。



 今日は文芸部に入部したい人が放課後に集まる。

 4階の端にある空きの教室が文芸部の部室となる予定。このまま入部すればだけどね。早く帰りたいなー、と思いながら教室のドアを開けると瀬波先生と3人ぐらい人がいた。男2人と女1人。あ、先生含めたら2人か。

「よし、全員来たから話し合いを始めようか」

 とりあえず、鞄を適当な所に置いて瀬波先生に注意する。

「私は瀬波典子です。よろしく。普段は4階の職員室にいるから。あと、現代国語の先生よ」

 そう言って一礼する。

 眼鏡をかけて、ストレートの長い黒髪は文学系要素を感じられる。

 目線を送り、押し付け合う。根負けして自己紹介することに。

「1年3組、紙白綴です。よろしくお願いします」

 一礼して自己紹介終了。次は女子が自己紹介をする。

「い、1年1組の文月綾音です。よろしくお願いします」

 どこか気が弱そうな雰囲気を醸し出していた。肩ぐらいまでに切り揃えた黒髪と背はあまり高くないので中学生に間違われそうだ。

 次は男子。面倒くさそうな顔していた。

「1年2組、本山晴輝。よろしくお願いします」

 ショートカットで悪質な癖を持つ茶髪に背は...同じくらいか。無愛想な雰囲気を醸し出している。

 最後は陽キャのような雰囲気を持つ男子だ。

「1年1組の作崎真太郎です。よろしくお願いします!」

 この中で1番いい挨拶をした。ストレートな黒髪で一つ結びの細目が特徴の男子生徒。クラスは文月さんだったかな、その人と同じみたいだ。ここで、文月さんの次に自己紹介すればよかったのでは?と思ってしまう。

 これで全員の自己紹介が終わった。

「全員の自己紹介が終わったね。皆は文芸部に入ることで合ってる?」

 一同一緒に頷く。つまり、1年間はメンバーは変わらないということか。


 こうして文芸部が創立した。

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