第46話  歩夢vsめぐり

 俺の目標はただ一つ。


 剣道でめぐりに勝つ。

 シンプルだ。

 しかし。


「何回でも受けて立つよ、私が」

「言ったな、めぐり」


 剣道しても、めぐりに何回も負けていた。

 

 口だけだけは強がれる。

 とにかく剣を振る。

 俺は一体何をすればいいんだ?


「一本!」

 

 貫徹さんの声が聞こえる。

 めぐりに触れることすらできない。


 人生でこれ以上の絶望は存在するのか?

 地獄と言っても生ぬるい。

 ここはどこだ?

 目の前にいるのはめぐりだ。


 めぐりなのに、人の顔を被った悪魔にしか見えない。

 そもそもこんなの勝負になってない


 ただ蹂躙されているだけ。

 惨めを晒し出している。

 渋谷の中で裸で突っ立って、周りに馬鹿にされるよりも恥ずかしい。


 嫌な思考が頭をループする。

 負けることしかできないのか?


 心持ちだけでいい。

 負けるな、俺。

 生きろ。


 体に鞭を叩いてようやく立てる。

 生きるんだ。

 俺の体、生きなきゃダメなんだ。


 俺の唯一できること。

 生命を捧げること。

 そんなことでいいなら


 喜んで俺は自分を捧げよう。

 俺は必死だ。

 必死は必ず死ぬ書く。


 ならいっそのこと、いっぺん死んでみっか。

 もし真剣ならもうとっくに死んでる。

 やれるだけやるしかないな。

 めぐりが嫌うめぐりを殺せるのは俺しかいないからな。


 99戦終わった。

 負けることには俺は貫徹さんで慣れている。


「まだやるの? 歩夢くん」


「頼む」


「持久戦でも無駄だよ」


 防具越しでも冷たい声が鼓膜に刺さる。

 めぐりの戦い方は分析できた。


 めぐりの剣は、音がしない。

 無駄が一切ない動きは、予兆すら与えず、気づいたときには斬られている。

 見切ったつもりでも、それは全部見切られていたというだけだ。

 あれは反応じゃない、支配だ。

 間合いも、呼吸も、感情すら読まれている。

 ただ美しいだけじゃない。容赦がない。


 優しさと冷酷が、同じ一太刀に宿っている。

 強すぎる剣は、孤独だと思っていた。でも違った。


 めぐりは誰よりも人を想って、誰よりも人から距離を取ってきた。


 その剣は誰よりも、傷ついた人の剣だった。


 俺は全てそれを包み込む。

 全ては今この時にためにある。


「抱月母刀」

「一本!」

 

 一瞬の隙をついて、こてを炸裂させた。

 その直後、貫徹さんの声も聞こえた。


「今のってまさか!」


「まぁな」


 めぐりがボッーと固まっていた。

 やがて、礼をしてからめぐりがかちゃりと防具を外した。


「嘘でしょ」


「めぐり、お主は確かに一本は取られたんじゃ」 


 貫徹さんが静かにそう告げた。


「うそうそうそうそ」


 めぐりがボッーとしつつ、口だけは動いていた。 

 信じられないことが起こったのか、さっきから何一つ口以外は動いていない。

 貫徹さんがめぐりの頭にポンと頭を置いた。


「お主は負けたんじゃ」


「ふええええん!」

 

 突然、めぐりが泣き出す。


「どうして歩夢くんにできて、私できないの?」


「まぁまぁ落ち着くんじゃ」


「私だって頑張ったんだよ、おじいちゃん」


 貫徹さんは優しげな目をめぐりに向ける。


「めぐりそのものだからできなくて当然じゃ」


「ふぇっ?」


 両手で涙を拭っていたが、急に顔を言った。


「めぐり気づいてなかったのか?」


「最初から言ってよぉ〜」


 めぐりは余計にうぁーんと泣き始めた。

 俺はめぐりに近づく。


「泣くことが赤ちゃんの仕事じゃんか。癒しや甘えが始まるにはまず泣くことからだ。

思う存分泣けよ」


「歩夢くん」


 めぐりはぐすんと泣き続ける。

 涙が両目から落ちるのが止まらない。


「よくここまでずっと頑張ってきたな、めぐり」


 俺はそうやってめぐりを撫でる。

 その後、めぐりは30分は泣いた。


「破月母閃使えば良かったの?」


 貫徹さんは一瞬だけどぴくっと体を震わせる。


「だって、それはもし私が私と戦うとしたらこうするなぁってものだし」


 貫徹さんが冷汗をだらだらとかいていた。


「そ、そ、しょうきゃもなぁ」


 貫徹さんの声は裏返ってた。


「おじいちゃん、一本だけ」


「久しぶりにやるかのぅ」


 貫徹さんは嫌そうな顔で防具を取りに行った。



「ふぅー」


「おじいちゃんにまた負けた」


 めぐりのボロ負けだった。


「危なかったのぅ、万が一ということを考えて、月華落旋をしっかり体に染み込ませていて良かった」


「またぁー」


 めぐりがぷくぅーと膨らませる。

 ずいぶんと子供っぽいなぁ。

 こんなめぐり久しぶりに見る。

 ともかく、めぐりが子供だなぁと俺は改めて実感ができた。

 帰りにはめぐりが俺にめちゃくちゃ甘えてきた。

 めぐりの凍った心を溶かすきっかけぐらいにはなれたんじゃないかなぁと思った。


◆◆◆あとがき、お礼、お願い◆◆◆


ここまでお読みいただきありがとうございます。


というわけで、


めぐりちゃんに歩夢くんがやっと勝てました。

一本だけどけど。


さて、


もし、


めぐりちゃん大好き、かわいいよぉ〜


歩夢くん、グッジョブ


貫徹さん、いいっすね


この話面白いっす


と思ってくださいましたら、


♡、☆☆☆とフォローを何卒お願いいたします。


レビューや応援コメントを書いてくださったらできるだけすぐ読みますし、返信も速やかに致します。


さてさて、次回は昨日の話の続きです、歩夢くんとめぐりちゃんの最終話です、エピローグ除いて、残り2話です。


更新は6月13日6時ごろです



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