第27話  漢字の漢と書いて、「おとこ」と読む

 めぐりと剣をめぐり道場で交えていた。


 ちなみに今日だけで49連敗している。


「次で50回目か、すごいぞ、1日あたりの連敗記録更新じゃないか」


 ガッハッハって笑いながら、貫徹さんが道場に現れた。


「めぐりさんの彼氏になりました、これからよろしくお願いします」


「ほぉー、良かったのぅ、今までもそうじゃなかったのか?」


「そうなんすよねぇー」


 貫徹さんが困ったような顔をしていたが、俺はどう答えればいいか分からなかった。


「ママになるだっけか? あれはどうなっとる?」


「まだ続いてますよ」


 俺が返答するした瞬間、貫徹さんの眉をひそめた。

 なんか悪かったか?

 めぐりがそばによってきた。


「歩夢くん、疲れてない? 大丈夫?」


「そうかぁー、めぐりは完全に歩夢くんのママじゃな」


 貫徹さんは苦虫を噛み潰したような表情をしていた。


「あっ、やだ」


 めぐりが声を上げた。


「ごめんね、私匂っちゃってる、汗いっぱいかいたからお風呂に行ってくるね」


 めぐりがたったったっと走り去っていった。

 そんなに気にしなくていいのに。


「鈴奈につけてもらったように俺に稽古をつけてもらっていいですか?」


「本当にいいのか?」


「はいっ」


 俺は元気よく返事をする。


「前振りじゃないぞ、ダチョウ倶楽部じゃないぞ、本当にいいのか?」


「はいっ! ネタが昭和ですね」


「後悔しないなっ、歩夢くん」


「はいっ! ネタが急に平成に! なんで今度は星のカービィみたいになってるんですか!」


「つい最近101周目をクリアして、RTA世界第2位になったからのぅ」

 

 貫徹さんは目を瞑りながら、顎を撫でている。


「何やってるんですか! お年もお年なのにめっちゃ現代的だな、普通にすげぇし、今何歳でしたっけ?」


「まだ81歳じゃ」


「年相応に見えないぐらいめっちゃ元気な爺さんっすね!」


 貫徹さんは目をキリッとさせる。

 目力が強いから圧がとにかくすごい。


「しつこいようじゃが、本当にいいんだなっ!」


「はいっ、やらせていただきます! 体力だけは自信があります」


 こうして、貫徹さんに稽古をつけてもらうことになった。


「げはーっ、ごふっ、ごふっ」


100連敗した。

やるんじゃなかった。

本当にやるんじゃなかった。

はじめたことに後悔しかない。


「もう一本いいっすか?」


「さすが努力マンじゃのぅ、まだできるか?」


「はいっ、まだ行けます」


 貫徹さんがポンも俺の頭に手を置いてきた。


「歩夢くん、わしの愛刀を見るか?」


「見ても分からないっすけど、いいんですか?」


 俺がそう言うと、貫徹さんはつよくうなづいた。 


「見てくれ、奥さん亡きわしの伴侶みたいなもんじゃ」


 貫徹さんはめちゃくちゃニコニコしていた。

 その顔はまるで大好きなお母さんを自慢する子供のようだった。 


「半月兼定じゃ」


「名刀かなんかですか?」


「月を半分に切れるほどの切れ味をということで兼定が作った刀ということじゃ」


 貫徹さんの笑顔は俺が生きてる中でもトップクラスに輝いてるものだった。

 本当に自分の刀を愛してると詳しくなくても十分に伝わってきた。

 俺は小さく手を上げる。


「あのちょっとした人生相談いいんですか?」


「なんじゃ?」


 貫徹さんはやっぱり笑顔だった。

 この人なら大抵のことを解決できるんじゃないかと何となく思った。


「俺、マザコンらしいんです」


 俺がそう言った後、「ふぅーむ」と貫徹さんは自分の手を顎に置く。

 その姿が様になっていて、威厳すら感じた。


「一つの手段としてはクソババアって10回叫ぶってことじゃ、母親を女神扱いしてることから人間に戻すんじゃ」  


「なるほど、今やってみます、ク……」


「抱月母刀のことを知ってるか?」


 俺のいうことが貫徹さんに遮られた。

 貫徹さんはウィンクをしている。

 何だろう。

 可愛いというか、単にカッコよくて。


「めぐりから聞いたことはあります、あと鈴奈がやってたようなぁ…」


「実は、あの技はめぐりを倒すためだけに編み出した技じゃ」


「え、そうだったんですか」 


 貫徹さんが小さく頷く。

 それから俺の目をじっと見つめてきた。


「歩夢くん、わしの方から頼むのもお門違いかもしれん」


 土下座すらしてきそうなぐらい真剣な眼差しを浮かべている貫徹さん。


「めぐりも解放してやってくれないか? 強すぎるんじゃ、実は、わしは抱月母刀からあるから勝てるだけなんじゃ、それ以外でやったら確実に負ける」


 貫徹さんは遠い目をしていた。

 嘘をついているわけではないらしい。

 貫徹さんは右手のにぎりこぶしを広げた左手にぽんと置いた。


「わしもバブみなるものを調べたんじゃが、めぐりは他の君のハーレムメンバーと違ってな」


 貫徹さんの目は座っていた。


「過干渉と過保護は違う、相手の自尊心を奪うもっとも効果的な手段じゃ」


 美咲ちゃんからは過保護と過干渉かもと感じたことがなくはない。


「心配は信用していないってことなんで、善意の皮をかぶってるだけの無自覚の悪意じゃ、その本心は自分の思い通りに支配をしたいだけなんじゃ」


 そういえば、俺の母親は実は過剰な心配性だ。

 前々からの俺の違和感がちゃんと言葉になった。


「人にする行為で最も無駄な行為は相手に期待をすることじゃ、自分のできることを増やす方が建設的じゃ」


 鈴奈からは期待されすぎて、辛いと感じていたこともある。


「大事なことだからもう一度言おう、あらゆる人間相手に期待をするのはそもそも間違いじゃ」


 貫徹さんの顔を見るといつも以上に真顔だった。

 何か言葉にも重みを感じる。


「めぐりはのぅ、わしの勘じゃとお主をもっとも自立させる女の子じゃ」


 急に優しい顔をしてきた。


「めぐりはアダルトチルドレンじゃ、略してあだちる!」


 と思ったら、子供っぽくふざけ出した。

 本当に自由な人だな。

 ただお茶目という言葉の方が似合う。


「めぐりは分かりすぎてるんじゃ、頼む」


 今度は手を合わせてきた。

 色々と忙しい人だ。


「漢になれ」


 まるで喝とでもいうようにピシャリとそう告げた。


「今度は君が強くなる番じゃ」


「分かりました!」


 武者震いをした。

 俺がやらなくちゃ誰がやるんだ。


「なり方は簡単じゃ」


「なんなんっすか!」


「わしに勝つこと、その方法はお主が抱月母刀を身につけることじゃ」


 むっず。

 でもやらなければならない。


「はいっ!」


 俺は声だけでも覚悟を伝えた。


「わしに負け続ければそのうち身につく、やれるか?」


 いや、勝てないんかいと突っ込んではいけないんだろう。


「やれます、続けるだけなら俺の得意技です」


「ありがとう」


 貫徹さんは今日1番の笑顔を見せた。


 ちなみに俺はこの後、もう100本負けた。


◆◆◆あとがき、お礼、お願い◆◆◆


ここまでお読みいただきありがとうございます。


というわけで、貫徹さんはお強い、いや強すぎるという回でした。


もし、


めぐりちゃん、可愛い


貫徹さん、お強い、いや、強すぎるわ!


歩夢くん、覚醒フラグ立ったな、頑張れ!


と思ってくださいましたら、


♡、☆☆☆とフォローを何卒お願いいたします。


レビューや応援コメントを書いてくださったらできるだけすぐ読みますし、返信も速やかに致します。


次回は少し役に立つけど、基本的にはおふざけ回です。


公開日は5月25日6時頃です。


お楽しみに!

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