第21話 第2次バブみ対戦
「勝負いたしましょう、めぐり姉様」
「いいよ」
めぐりの声は冷たかった。
冷たいというより、何にも興味ないよといった感じだった。
「一本だけでいい?」
静かな声なのにスパッと空気を刀で切ったかのような凛とした声が道場に響き渡る。
「やりましょう」
鈴奈はノリノリだった。
「お願いします」
めぐりはぺこりと綺麗に礼をする。
「お願いいたしますわ」
鈴奈の礼の美しさも負けていない。
次の瞬間。
めぐりが消えた。
「はっ」
ぱーん。
「効きませんわよ、対策しましたもの」
鈴奈が非常に楽しそうにいう。
こんなに鈴奈がわずか短期間で対応してくるなんて思いもしなかった。
「いくよっ!」
「抱月母刀」
鈴奈が静かに告げた。
その声はまるで武士が人を一刀両断できる時のようにスパッと道場の空気を切り裂く。
「ん?」
めぐりがすごい大きな声を出した。
どうした、めぐりらしくない。
明らかに慌てていた。
「貫徹お祖父様に教わりましたわ」
「そう」
鈴奈が楽しそうに声を上げるのに対して、めぐりはあくまで冷静だった。
「貫徹様に聞きましたけど、うまくできませんわね、ふーん、時間が要りますわね、ちゃんとしたものなら、多分20年ほどでできるかと」
鈴奈が困ったように告げる。
20年はかければできるのかよ。
「それじゃあ勝てないよね?」
「負けもしませんわ」
鈴奈の方が逆にめぐりを追い詰めているように見える。
「確かにね」
納得したかのような様子を見せるめぐり。
「私もどうせ負けないからこのままじゃキリがないね」
めぐりはつまらなそうにそう告げた。
めぐりの剣に対するものは自信というのではなまぬるいものだった。
確信。
まるで自分が剣が強いのは事実ということをただ知っているという様子だった。
「どうしますか? 私に勝ってくださいますか?」
鈴奈の顔は見えない。
もし見えたなら、実にキラキラした目をしながら、笑っていただろう。
強者の笑み。
日頃の自信満々の鈴奈の様子が思い浮かぶ。
鈴奈は基本的になんでも平均的なところ以上にはすぐできてしまう人間だ。
スペックが高いのに努力もできてしまう。
俺と違って、元から持ってるものが異様に多いのに俺以上に努力の量もすごいし、努力の質がすごい。
こんな義妹に勝とうなんざあまりに傲慢なのでもうとうの昔に俺は諦めているぐらいだ。
「次は鈴奈ちゃんの土俵でやろうよ」
防具をポスッと鈴奈は外す。
少し顔を鈴奈が振ると、汗が綺麗に飛び散る。
その姿もまるで芸術作品かのように我が義妹ながら美しい。
鈴奈はニコッとする。
「いいんですか? 剣道以外は全て私が勝てますけど」
私は事実を述べた。
「いいよ、やってみなきゃわからないでしょ」
めぐりと鈴奈は静かな雰囲気だったが、お互い殺気がすごかった。
「では、場所を移しましょうか」
いつも通りのアイドル用スマイルで鈴奈は平然とそう告げた。
剣士のめぐりにビビらないのって鈴奈ぐらいじゃないか?
お弟子さんも俺もめっちゃ圧に押されまくって萎縮してるってのに。
めぐりは手慣れた姿で移動の準備を始めた。
※
俺はほっとした。
いつものめぐりを見れたからだ。
オレンジ色の熊さんエプロンをつけて、ほんわかした母性あふれる姿のめぐり。
剣士の時のめぐりはぞくっとしていて、なんだか怖いのだ。
どっちのめぐりも魅力的ではある。
ただ本能的に恐怖心が出るのは抑えることは少なくとも今の俺にはできない。
「授乳プレイだと兄様に断れるので授乳ごっこでどうでしょう?」
「そうしよう」
めぐりがほんわかと笑った。
俺はゾワっとした。
なぜいつものめぐりなんだ。
さっきまでの雰囲気が微塵もなくなっていることに俺は驚きを隠せない。
「公平な審判にするために私の次にバブみに詳しい美咲さんをお呼びいたしました」
鈴奈がバスガイドのように右手で美咲ちゃんの存在をアピールした。
すると、美咲ちゃんがなぜか緊張した様子でぺこりとした。
「はい、お願いします。って、なんで私が変なことに巻き込まれてるんですか、私も参加したいです!」
「私に勝てますか、美咲さん」
「絶対に無理ですっ!」
美咲ちゃん、即答。
どんだけ鈴奈はすごいんだ。
いや、兄目線この義妹のハイスペックさには呆れていく毎日なんだけどさ。
「で、鈴奈ちゃん、どう審判すればいいの?」
「勘ですかね?」
「私の主観とか好みでいいってこと?」
「そうですわね」
「いつも分かりづらいんだから、私じゃなかったらどうするの?」
「美咲さんですから」
鈴奈はそう言って、よしよーしと美咲ちゃんを撫でる。
美咲ちゃんはぷくっーと頬を膨らませながら、おとなしく撫でられていた。
「ここにASMR用の脚本がありますのでそれを実演でやりましょう、美咲さんがどっちの方がバブみ、まぁ母性とでも言いますかね? あるかどうか判断をしてくださいます」
「鈴奈ちゃんが言うからいいけど、私でいいの?」
「大丈夫です」
鈴奈は自信満々だった。
「うぇっ、ある意味プレッシャーかかるなぁ。そんなに私鈴奈ちゃんほどすごくないよ」
美咲ちゃんが少し引いていた。
「じゃあ、私なりに演じてみるのでこれをやってみることにしましょう、歩夢先輩こっちにきてください」
美咲ちゃんが俺の腕を引っ張った。
「まず膝枕をします」
俺の頭は美咲ちゃんの膝に乗っけられた。
ふかふかだ。
今度は軽く見上げてみる。
なぜだろう、美咲ちゃんの顔が見えない。
胸がでかいからか。
この子、巨乳なんだよなぁ。
ふと思い出す。
「いい子、いい子」
そう言って、美咲ちゃんが俺の頭を撫でてきた。
なんだろう、頭がふわふわする。
撫で方が気持ち良すぎて眠たくなってきた。
「もっーと私に頼ってもいいからね、だからいっぱい甘えてね」
今度は甘い声が鼓膜を包み込む。
心がふわふわしてきた。
「ふふっ、可愛い、赤ちゃんみたい」
あー、なんだか現実感無くなってきた。
体すべてがふわふわしてきた。
めっちゃ心地いい。
とりあえず温泉よりも心地いい。
懐かしい感じすらする。
俺はこうやって甘えていた。
「歩夢先輩、起きてください」
頬をツンツンとされた。
「んぎゅっ!」
「本当歩夢先輩可愛いですね」
美咲ちゃんの笑顔が目に入った。
やだ、何この子、可愛すぎて恋しちゃいそう。
バブみを味わったばかりだから少しだけテンションがおかしくなっていた。
俺は頭を美咲ちゃんの膝枕から頭を起こす。
「めぐり先輩、鈴奈ちゃん、アレンジしていいからこんな感じでお願いします」
「うんっ、わかった、歩夢くん、頭をここに乗せて」
めぐりは膝の上をポンポンと叩いた。
そこに頭を乗せろと言うことだろう。
俺はめぐりの膝に頭を乗せた。
「いい子、いい子」
そう言って、めぐりが俺の頭を撫でてきた。
撫でられて気持ちいい。
でも、手が震えていた。
なんだろう、自信がないのか?
「もっーと私に頼ってもいいからね、だからいっぱい甘えてね」
めぐりの声が聞こえる。
ただ聞こえただけだった。
「ふふっ、可愛い、赤ちゃんみたい」
めぐりは本当に楽しそうに笑ったけど、なんだかぎこちなかった。
というか、あまりめぐりが言わなそうなセリフだったのであまり心に響かなかった。
「歩夢くん、大丈夫? 疲れてない?」
めぐりが心配そうに覗き込んできた。
なんだろう、このめぐりのセリフが1番心が突き刺さった。
めぐりらしさがなぜかなかったような気がする。
「作りものですね」
鈴奈の冷たい声が聞こえる。
残酷な台詞だった。
でも、俺は否定もできなかった。
「こうですよ、めぐり姉様、さぁさぁ兄様、私の膝下にいらっしゃいませ」
俺は頭を鈴奈の膝に乗せる。
俺は美少女3人に膝枕をしてもらったことになる。
なんて贅沢な状況なんだ。
「いい子ですねぇ、あなたはよくがんばりました、自分を神様だと思えるぐらい褒めてください、頑張りすぎましたね、凄すぎます」
そう言って、鈴奈が俺の頭を撫でてきた。
撫でられただけで涙が出てきた。
あれなんでだろ?
「何もかも私に頼ってもくださいね、何があっても私はあなたの味方ですよ」
俺はすべてが肯定されているのか。
もはや、現実感がなくなってきた。
「ふふっ、可愛いですね、赤ちゃんよりも可愛いかもしれません、大好きですよ」
あー、ダメ人間になりそう。
でも、そうなってもいいや。
「兄様、起きてください」
今度は鈴奈に頬をツンツンとされた。
イタズラっぽくにひぃーと笑っている。
こういうところはなんだか妹っぽい。
「さすがですね、鈴奈ちゃんの勝ちってところですかね? アレンジされまくりましたけど、そこはもうアドリブなんで」
美咲ちゃんはうーんどうなっていた。
やはり鈴奈はすごかったようだ。
「甘やかすなら本気で心を包み込むつもりじゃないと」
「抱月母刀みたいにってことだね」
鈴奈とめぐりはお互いを睨み合っていた。
「どういうことですか、なんか難しい四字熟語が出てきましたけど!」
美咲ちゃんは目を丸々くさせていた。
そりゃそうなんだろうなぁ。
「めぐり姉様、出直してくださいね」
「すごい強者感だよ、なんなの、この鈴奈ちゃんの迫力」
美咲ちゃんはやっぱり驚いていた。
なんか君を見ているとほっこりするよ、美咲ちゃんと語りかけたい気分だった。
今日は美咲ちゃんがいて本当に良かった。
こうして、鈴奈とめぐりの勝負は鈴奈に終わった。
美咲ちゃんも勝負に入っていいだろうけど、鈴奈相手にはやばや引き下がっていた。
この3人の勝負は総合的にみても鈴奈の勝ちといったところだろう。
ただ、いまだになんの勝負をしているかいまいち理解しきれていない俺だった。
◆◆◆あとがき、お礼、お願い◆◆◆
ここまでお読みいただきありがとうございます。
というわけで、鈴奈とめぐりの対決回でした。
もし、
鈴奈ちゃん、すっごくかわいいです。
めぐりちゃんも可愛いよ。
美咲ちゃんも可愛い
と思ってくださいましたら、
♡、☆☆☆とフォローを何卒お願いいたします。
レビューや応援コメントを書いてくださったらできるだけすぐ読みますし、返信も速やかに致します。
次回からはめぐりちゃんの反省会となります
公開日は5月18日6時頃です。
ぜひぜひお楽しみに!
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