第17話  めぐり道場

ここはめぐりとめぐりのじいちゃんが住んでいる家の道場。


「僭越ながらお相手させていただきます」


「こちらこそお願いいたします」


 鈴奈とめぐりが竹刀を持って、相対していた。


「やぁー」


 鈴奈が勢いよく、めぐりに向かっていく。


「はっ」

 

 めぐりは鈴奈の剣をそのまま受け止める。

 竹刀と竹刀がぶつかり合う、乾いた音が道場に響いた。

 めぐりと鈴奈、互いに間合いを詰め、交差する瞬間に鋭い音を立てる。


「さすがですわ、めぐり姉様、やりますわね」


「鈴奈ちゃんこそ」

 

 めぐりの凛とした声が静かな道場に響き渡る。

 一撃一撃は決して力任せではない。

 めぐりの剣筋は力任せというより洗練されていて、ただひたすらに鋭かった。


 一方で、鈴奈の一撃一撃がめぐりの急所を突こうという殺意が感じられる。

 それをめぐりは柔らかく受け流し、時に弾き、わずかな隙を探っているようだった。

 動きはのびやかでいながら、しなやかで、まるで氷の上を舞っているようだった。

 踏み込むたびに床がわずかにきしみ、竹刀同士のぶつかり合いは、息を呑む静寂の中に確かなリズムを刻んでいた。

 

 どちらも簡単には引かない。

 ただ、美しいとしか言いようがなかった。


「秘技、乳揺れです」

 

 鈴奈が突然、ジャンプしてめぐりに突っ込んでる。


「兄様には効果抜群、他にも効果があります」

 

 なぜか攻撃しながら、解説してくれた。


「効果あるわけねぇだろ」


「くっ!」


「めぐりにも効いてるよ、意味わかんねぇ」

 

 めぐりに効果抜群だった。


「やはり乳の大きさが私にも勝ててないことを気にしていましたか?」

 

 鈴奈は防具をかぶっているが、それでもニヤニヤとしているのがわかった。


「うっ」


「隙ありっ」

 

 鈴奈が面を狙いに行くが、めぐりがそれを弾く。

 それから、横に切り、鈴奈相手に胴が決まった。


「参りましたわ、めぐり姉様」


「少しだけひやっとしたよ、久しぶりに」

 

 めぐりが防具を外して、首を横に降り、汗を飛ばす。

 その姿はとても美しかった。

 

 その後の第二試合。

 次はめぐりと美咲ちゃんの試合だ。

 鈴奈はその時は着替えに行っていて、その場にはいなかった。


「やぁー」


 美咲ちゃんの可愛い声が聞こえる。

 ぱーん。

 めぐりは軽くいなしながら、素早く竹刀を振った。


「こてだよ?」

 

 竹刀はいつの間にか、美咲ちゃんの右手にあった。

 試合時間、1分ぐらい。

 これは美咲ちゃんが弱いんじゃなくて、めぐりが強すぎるだけだ。

 

 ちなみに俺は鈴奈とやる前にめぐり相手に10連敗している。

 鈴奈が単に凄かっただけである。


「強いですね、めぐり先輩、私どうしたらいいんですか?」


「軍を全うするを上と為し、軍を破るは之に次ぐ。旅を全うするを上と為し、旅を破るは之に次ぐ。卒を全うするを上と為し、卒を破るは之に次ぐ。伍を全うするを上と為し、伍を破るは之に次ぐ」

 

 めぐりは目を閉じて、すらすらとそう言った。


「え、どういうことです?」

 

 美咲ちゃんが首を傾げる。


「戦わないのが1番ってことだよ、戦ったら負けってことだよ」

 

 めぐりは冷たくそう告げる。


「強くたって何にもならないよ、ただおじいちゃんの道場を守りたいだけ、守りたいものを守る、それをずっーとやってきただけだよ」

 

 めぐりはポツリとそう言った。

 守るという言葉の語気だけがやたら強かった。

 めぐりの母性の豊かさはこんなところからもきていたのかと俺は改めて驚いた。


「でも、そうそう私に勝てる人は現れないみたいだね」

 

 めぐりはつまらなそうに笑った。


「着替えてくるね、歩夢くんは奥の部屋行ってて」

 

 めぐりが立ち去るその背中姿はなぜだかとても寂しそうに見えた。


 

 俺はめぐりの部屋である和室へと向かった。

 そこでお茶をすずぅーと吸いつつ、外の庭を眺めている時だった。


「いやぁー、歩夢くん」

 

 めぐりのじいちゃん、貫徹さんが入ってきた。


「右手何があったんですか?」

 

 右目に大きな傷があった。


「これか、偽物だぞ」

 

 貫徹さんは目をガバッと開いた。


「うわっ!」


「これはわしの趣味じゃ」

 

 そう言って、貫徹さんはガッハッハっと笑う。

 相変わらず茶目っけあって、豪快な人だ。


「めぐりはどうじゃ?」


「俺のママになってもらってます」

 

 現状を簡潔に伝えた。

 すると、貫徹さんは目を丸くした。


「ママじゃと?」


「ママです」

 

 事実なのでそういうしかない。

 自分でも我ながら何を言ってるかわからん。

 説明すると長くなるし。


「わっはっは、よくわからんが最近のめぐりは楽しそうじゃからのぉ」

 

 貫徹さんは部屋に響き渡るぐらい大きな笑い声をあげた。

 こんなに幸せそうなのは久しぶりに見た。

 何かあったのだろうか。


「めぐりにはなぁ。寂しい思いをさせてしまった。なんでもできて、いつも笑顔でなぁ。女房や娘よりもなんでもできてなぁ」

 

 そう言って、貫徹さんは遠い目をした。

 めぐりは実は父母と暮らしておらず、貫徹おじいさんと二人暮らしだ。

 早いうちから父母を交通事故で亡くし、後を追うように祖母もなくすというめぐりもなかなかにハードな人生を送っている。

 貫徹さんは母方のお爺さんだ。

 道場をやっていて、なんとか一振流だか、江戸時代から続くものを継承しているらしい。

 それから、会社も運営していたり、バイタリティがめちゃくちゃある豪快な人だ。


「兄様、こちらにいらしたんですね」


「歩夢先輩、鈴奈ちゃんがまた私に変なことしてきますぅ」


「歩夢君、休めた? あ、おじいちゃん、歩夢君に迷惑してない?」

 

 鈴奈、美咲ちゃん、めぐりがぞろぞろとやってきた。

 貫徹さんが3人の姿を見ると、にたにたとしだした。


「おー、すごいハーレムじゃ、若い頃のワシよりモテてるんじゃないか?」

 

 貫徹さんは顎を右手で擦りながら、ニヤリと笑う。


「おじいちゃん、歩夢君のママなのは私だよ」


「さっき、歩夢君が言ってたのは本当だったのか、楽しそうで何よりだが」

 

 貫徹さんは少し困った顔をしていた。


「兄様をおぎゃらせるのは私です」


「歩夢先輩はそのうち私におぎゃります」

 

 鈴奈、美咲ちゃんもめぐりに後に続いた。

 貫徹さんは困りすぎて、もはやしかめ面になっていた。


「この二人に至っては何を言っているかがわからん、たぶん歩夢君がモテモテっていうことなんだろうな」

 

 ある意味、貫徹さんの現状への理解力が高くてとても助かった。

 この後、俺たちは貫徹さんと仲良く過ごした。

 改めて考えると、俺はハーレムを築いているのだろうかと考えるのであった。


◆◆◆あとがき、お礼、お願い◆◆◆


めぐりちゃんのイラストを貼っておきます


https://kakuyomu.jp/my/news/16818622175045622793


イメージしやすくなるんじゃないでしょうか?


ここまでお読みいただきありがとうございます。


というわけで、美咲ちゃんもやっぱり可愛いでしょう(どやぁ、作者渾身のどや顔)


もし、


貫徹さんいいっすね


めぐりちゃん、凛としてて美しい、改めて好きになりました


鈴奈ちゃんはやっぱり面白い、結婚したいです


美咲ちゃん可愛い


と思ってくださいましたら、


♡、☆☆☆とフォローを何卒お願いいたします。


レビューや応援コメントを書いてくださったらできるだけすぐ読みますし、返信も速やかに致します。


次回は大人気アイドル声優 鈴奈の回です。

コンサート回です、ぜひお楽しみください。


公開日は5月15日6時頃です。可愛いと思いますよ、ぶれない子ではありますけど。


ぜひぜひお楽しみに!

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