第5話 年下で巨乳なバブみある後輩、小宮 美咲登場
「歩夢先輩っ。好きです」
放課後の教室は、夕焼けの光に静かに満たされていた。
その中で、小宮美咲ちゃんは、まるで挨拶でもするかのように、あっさりと言葉を差し出してきた。
美咲ちゃんは、一見すると年下とは思えないほど大人びた空気を纏っていた。
艶のあるショートボブの髪は、自然と顔まわりを優しく縁取り、右側には小さな黄色い花のヘアピンがワンポイントで光っている。
頬をほんのり紅潮させた笑顔は、素直で屈託のない年下らしい可愛さと、まるで誘惑しているかのような色気を感じさせる。
また、服の上からでもわかるほどに豊満な胸元主張されており、見る者すべての理性を溶かしかける。
年下で小柄なのに、なぜか母性を感じるのは気のせいだろうか。
放課後、誰もいない教室。背後の窓から夕日の差し込む赤みがかった光。
この状況でいきなりそんなことを言われたら、当然、フリーズする。
「何回もすみません。私の気持ちは本気ですので」
美咲ちゃんは柔らかく微笑んだまま、喋り続ける。
声のトーンは穏やかで、感情の起伏が少ない。
まるでそれが当たり前の事実であるかのように、淡々と告白してきた。
俺はこの気持ちは本気だということを知っている。
それは美咲ちゃんに告白されるのはこれが初めてじゃないからだ。
けれど俺の好みは、どうしようもなく、めぐりに偏っている。
だから俺は、ずっと断ってきた。
「私の苗字、“小宮”の“こ”が“子供”の“子”だったら、“子宮”になってたんですよね」
ん?
あまりにも自然に繰り出された単語に、思考が一瞬追いつかなかった。
「急な下ネタどうしたんだよ」
「ふふっ、歩夢先輩、えっちです。そんなに私の子供、欲しいんですか? 私は、お望みなら頑張って産みますよ?」
口調は冗談のように軽やかだった。
けれど、美咲ちゃんの表情は終始、変わらない。
どこまでが本気で、どこからが冗談なのか、判断がつかない。
まるで俺が悩むことを企んでいるかのように。
「ちなみに、私の胸はGカップです。めぐり先輩より、大きいです」
美咲ちゃんは無表情のまま、自慢の胸を張った。
ドヤ顔はしていないが、美咲ちゃんなりのドヤ行為なんだろう。
突然、ドアがガラガラと開く音が静寂な空気を引き裂いた。
めぐりがはぁはぁと息を荒くしてた。
顔は真っ赤であり、ほんのり汗をかいている。
どうやらここまで走ってきたようだ。
「また美咲ちゃん! 私の歩夢くんを甘やかすのは私だよっ」
声のボリュームが大きいわけじゃない。けれど、めぐりの言葉には、珍しく明確な怒気が含まれていた。
普段は温厚なめぐりにしては、ずいぶんと珍しい表情だった。
「めぐり先輩、お分かりですか? バブみの厳密な定義は、年下に甘えることです。あなた、年上ですよね?」
鋭い指摘に、めぐりは「うっ」と一瞬たじろいだ。
めぐりは抗議しようと口を開きかけて、すぐに閉じる。
その仕草に、ほんの少しの悔しさがにじんでいるのが分かる。
「甘えられて安心できる場所があるから、人は頑張れるんです」
美咲ちゃんのその言葉には、からかいも、皮肉もなかった。
静かに、真っ直ぐで、思いやりが滲んでいた。
「めぐりさんは歩夢先輩をちゃんと甘やかせていません」
「そんなことないもんっ!」
ぷくっと頬を膨らませためぐりに、俺は一瞬、目を奪われた。
思わず、笑ってしまいそうになる。
めぐりにも、こんな子供っぽい一面があるんだな。
なんだか、可愛い。
「歩夢先輩、私にバブみを感じて、遠慮なくおぎゃっていいですよ。あの時みたいに」
美咲ちゃんは俺におめめパッチンとばかりにわざとらしく大袈裟なウィンクをしてきた。
「あの時?」
めぐりが不安そうな顔を向けてくる。
俺も覚えがない。
美咲ちゃんは、懐かしむように少しだけ目を細めた。
「人間、ダメなところは誰にでもあります。いちばん弱い部分を、誰かに見せられる。それを受け入れて守ってこそ、ママだと思うんです」
母性とは何か。
その問いに対しての、美咲ちゃんなりの1つの明確な答えのようだった。
「生まれた時は、みんな赤ちゃんです。だから、赤ちゃん帰りしても、私はいいと思ってるんです」
そこまで戻りたいとは思わないけど。
確かに、誰かに弱音を見せたいという気持ちが、時折、ふと心をよぎることはある。
「私こそ、歩夢先輩の“母”になれる女性です」
その言葉に、めぐりがまた口を開きかけて、何も言わずに沈黙する。
「私なら、歩夢先輩の弱さ、全部受け止められます。赤ちゃんに戻っても、構いません」
「いや、赤ちゃんまでは戻りたくはねぇよ」
一瞬理解しかけたが、やっぱり美咲ちゃんの考えを俺はまだ理解できない。
「では、哺乳瓶からですね」
「あのな!? 人の話、聞けよ。というか、美咲ちゃんはなんで持ってるんだよ、哺乳瓶」
振り返ると、めぐりも手に哺乳瓶を持っていた。
「めぐりもかよっ!」
どこから出したのかなんて、もはや聞く気にもならなかった。
「私が歩夢くんにあげるの」
「私が先にあげるんです!」
二人の視線が交錯する。
静かだった教室の空気が、ほんの少しだけ、温度を持ち始めた気がした。
「あのさ、いうのも恥ずかしいけど話が進まないから言うけどさ、俺はたまに甘えたいだけだって」
めぐりと美咲ちゃんがきゅぴーん目を光らせる。
「歩夢先輩は私にバブみを感じておぎゃらなければならないんです」
「歩夢くんは体をしっかり休めて無理しないことが大事なの!」
2人がそれぞれほぼ同時にそう言った。
言ってる内容はまだめぐりの方がよく分かる。
「俺自身、前々から言ってるけど、バブみって言葉の意味は知っててもその感覚は分からないよ、美咲ちゃん」
美咲ちゃんは俺のそんな言葉を聞いても眉ひとつ動かさない。
本当どこまでも感情の読めない子だ。
「いいですよ、歩夢先輩。歩夢先輩はいずれ私におぎゃるようになってきますから」
「どっからその自信やってくるの!」
「また告白します。ではでは失礼します」
美咲ちゃんはぺこりと綺麗に頭を綺麗に下げるとその場を去っていった。
めぐりはじっと俺を見つめていた。
何が言いたそうだ。
「歩夢くん、この際だから私の考えをいっとくね」
「俺も興味あるわ」
めぐりの方が美咲ちゃんよりまともなことを言いそうだが、いざどんなことを思っているかはよくよく考えれば知らなかった。
「私は歩夢くんが無理をして体を壊さないことが大事だと思うの」
「それはよく言ってるな」
「だから私はもっと歩夢くんの弱音と愚痴を聞きたい、それを受け止めたいの!」
「言ってるつもりだけど?」
「それが今の考える私に甘えるってことなの」
めぐりは物悲しそうにそう言った。
まだまだ俺も抱え込んでると思われているのか。
なんか悪いことしたな。
「もっと思いのまま、いってみるように頑張ってみるよ」
「また頑張っちゃうんだね」
「あっ!」
「本当可愛いね、歩夢くん」
めぐりは今日1番の笑顔を見せる。
少なくとも、今の俺にとっては、そんな笑顔を浮かべるめぐりが俺の思う理想のママに、一番近い気がした。
◆◆◆あとがき、お礼、お願い◆◆◆
ここまでお読みいただきありがとうございます。
今回は後輩キャラ、美咲ちゃんのお話でした
もし、
こんな後輩すっごく素敵だなぁ
美咲ちゃんも可愛いよ
めぐりちゃんも可愛いなぁ
と思ってくださいましたら、
♡、☆☆☆とフォローを何卒お願いいたします。
レビューや応援コメントを書いてくださったらできるだけすぐ読みますし、返信も速やかに致します。
次回は美咲ちゃんの心の内を覗きます、どんなことを考えていますか?
公開日は5月3日6時頃です。
お楽しみに!
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