チエコ先生とキクちゃんの水平思考クイズ【61】不可解なカフェタイム【なずみのホラー便 第163弾】

なずみ智子

不可解なカフェタイム

【問題文】


 とっても仲良しな三人の女子大生、お松さん・お竹さん・お梅さんが、オシャレでゆめかわいいと評判の映えスポットなカフェに行きました。

 そのカフェでは、マカロンと紅茶のセットが販売されていました。

 お松さんはMセットを、お竹さんはLセットを、お梅さんは彼女たち二人とは異なるセットを頼みました。

 美味しいマカロンと香り高い紅茶をおともに、彼女たちの話に花も咲きましたが一番最初にマカロンを食べ終えたのはお梅さんでした。

 二番目に食べ終えたのは、Lセットを頼んだお竹さんです。

 そろそろ別のオシャレカフェに行こうか、と思い始めたお竹さんとお梅さんですが、Mセットを頼んだお松さんだけが「もうひょっとだけまっへえ、のこひたらもったいないひぃ(もうちょっとだけ待って、残したらもったいないし)」とモグモグモグモグとマカロンを食べ続けていました。

 そんなお松さんをお竹さんとお梅さんはしばらく待ってはいましたが、ついには痺れを切らし、「私たちは、別の映えスポットカフェで待ってるね」と、先にカフェを出ていきました。

 さて、なぜ、お松さんはマカロンを食べ終えるのに時間がかかっているのでしょうか?



【質問と解答】


キクちゃん : 今時の三人の女子大生の名前が時代に逆行しているようなネーミングセンスであるのはさておき、これは単純にお松さんの食事のスピードが原因だと思います。Lセットを頼んだお竹さんより、Mセットを頼んだお松さんの方が食べ終えるのに時間がかかっているわけですし……おそらく、お松さんは「よく噛んで食べなきゃ食べた気がしないし」とか「せっかく美味しいマカロンなんだから、じっくり味わわなきゃ」と考える人だったのだと。お松さんは、他の二人よりも食事のスピードが遅い人だったのですか?


チエコ先生 : NO。彼女たち三人の食事のスピードは、ほぼ同じぐらいよ。


キクちゃん : となると、お松さんがマカロンを食べ始めた時間が他の二人よりも遅かったのではないでしょうか? 問題文中には「評判の映えスポットなカフェ」とあるし、お松さんは自身のSNSにアップするための写真の撮影に……可愛いマカロンとの自撮りなどに夢中になり過ぎてしまっていたり……それか、直前に誰かから電話がかかってきて、いったんカフェの外に出て話をしていたらそれが思ったよりも長電話になってしまったり……お松さんが他の二人よりも遅れてマカロンを食べ始めたのですか?


チエコ先生 : NO。マカロンを食べ始めたのも、ほぼ同時刻だったのよ。


キクちゃん : となると、どういうことだろう? とりあえず、現時点で判明している点をまとめると以下のようになりますね。


――――――――――


・お松さん = Mセット ⇒ まだモグモグ中

・お竹さん = Lセット ⇒ 二番目に食べ終えた

・お梅さん = ?セット ⇒ 一番最初に食べ終えた


※ 彼女たち三人の食事のスピードならびに、その開始はほぼ同時刻である。


――――――――――


 お梅さんについては「彼女たち二人とは異なるセットを頼みました」と問題文中にありますし、一番最初に食べ終えたことから推測するに当然マカロンの数が一番少ないであろうSセットを頼んでいますよね?


チエコ先生 : NO。お梅さんが頼んだのはSセットじゃないわ。


キクちゃん : Sセットじゃなかった? 


チエコ先生 : お梅さんが頼んだのマカロンのセットのVセットよ。


キクちゃん : V? あ、もしかして、スター○ックスのドリンクサイズと同じく「Venti」の頭文字なのかも? ……でも、そうなると、他のマカロンセットの名称も「Demi」「Short」「Tall」「Grande」「Trenta」などでなければ統一性がとれていないような気もしますが? でも、これで分かりましたよ! 問題を解く鍵はマカロンの数ではなく、ドリンク……すなわち紅茶の容量にあったのですね?


チエコ先生 : NO。紅茶の容量については、三人とも同じだから関係ないわ。もう一度、マカロンに視点を戻してみて。


キクちゃん : となると、「Vセット」や「Sセット」、「Mセット」といったセットの名称はマカロンの数ではなくフレーバーの略文字だったのかも? 「V」はVanillaの略で、「S」はStrawberry、「M」はMarron……だったとか? マカロンセットの名称は、それぞれのフレーバーの略文字ですか?


チエコ先生 : NO。フレーバーではなく、やはりそれぞれの数を示しているものよ。特大ヒントを出すわね。お梅さんが頼んだVセットのマカロンの数は「5個」よ。


キクちゃん : 「Vセット=5個」ということは、このVは英語の頭文字ではなく、ローマ数字であったということですか?


チエコ先生 : YES。


キクちゃん : でも、アラビア数字に慣れきっている私が知っているローマ数字といえば、時計の文字盤のⅠからⅫをはじめとし、作者がよく遊んでいるタロットカードの大アルカナ「XXI. The World(21.世界)」までぐらいですよ。「M」や「L」というローマ数字もあったとは……そして、ローマ数字においては、「L」よりも「M」の方が大きい数になるのですか?


チエコ先生 : YES。「M」は1000で、「L」は50よ。


キクちゃん : へ、へえ……改めてまとめてみると、以下になりますね。


――――――――――


・お松さん = Mセット(マカロン1000個) ⇒ さすがにまだモグモグ中

・お竹さん = Lセット(マカロン50個) ⇒ 二番目に食べ終えた

・お梅さん = Vセット(マカロン5個) ⇒ 一番最初に食べ終えた


※ 彼女たち三人の食事のスピードならびに、その開始はほぼ同時刻である。

※ それぞれのセットの名称は英語の頭文字の略ではなく、ローマ数字であった。


――――――――――


 カフェの規模は問題文中に描かれていませんが、よく1000個以上ものマカロンを常備していましたね。1000個ものマカロンを完食する気でモグモグモグモグ食べ続けているお松さんも凄いですが、すでに50個のマカロンを食べ終えた後であるにもかかわらず、次なる映えスポットカフェに移動しようとしているお竹さんもよくよく考えると凄い人だと思います……。これはもはや完全にギャグマンガの世界じゃないですか? 「不可解なカフェタイム」というよりも、彼女たちのブラックホール化しているお腹の方が不可解ですよ。



(☕完☕)

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