　リリアナは息を整えながら村の西の畑へ向かった。夜明け前の薄暗い空の下、確かに不審な影が蠢いている。彼女は慎重に距離を詰め、木々の陰からその様子をうかがった。

　そこには、粗末な装備に身を包んだ数人の男たちがいた。彼らは村の作物を引き抜き、袋に詰めている。明らかに盗賊の類だった。

「……おい、急げ。見つかる前に持ち帰るぞ」

　一人の男が囁きながら手早く作業を進める。その態度から、これが初めての犯行ではないことが窺えた。

　リリアナはその場を離れ、村の警戒を固めるために長老のもとへ向かった。村の男たちが武器を持ち、静かに侵入者たちを取り囲んだ。

「お前たち、何者だ！」

　長老の鋭い声が響くと、盗賊たちは驚いて振り返った。しかし、彼らの表情には余裕があった。

「……おや、もう見つかっちまったか」

　盗賊の一人が薄ら笑いを浮かべた。

「俺たちはただの旅の商人だよ。ちょっと食糧を分けてもらおうと思っただけさ」

「嘘をつくな！」

　村人の一人が怒鳴る。その瞬間、盗賊の一人が腰の短剣に手をかけた。

「仕方ねえな。力づくでいただくとするか——」

　盗賊たちは刃を抜き、村人たちに向かって襲いかかった。

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