湖畔に寄り添う月のように

あ、まん。

第1話 姉


両親は、私たち双子に等分に愛情を注ぐタイプだった。

同じ服。同じ食事。同じ人形。

寝るのもトイレに行くタイミングもみんな同じ。

でも不思議と性格だけは少し違った。


出しゃばりな私に対して、妹は私の背中に隠れる引っ込み思案な子。

私が淡く輝く月なら、妹は寄り添いながら水面に月を映し出す湖のような存在。


妹を泣かせた男子を逆に泣かせて先生に叱られた。

二人とも牛乳が好きじゃないけど、給食の牛乳を代わりに飲んであげた。


私が妹を守らなきゃ。

だけどホントはわかってる。

妹の方が私よりしっかりしてるって。

私は空回りばかりしてる。

肩の力を抜こうと深呼吸しても、余計に気が張っちゃうタイプ。


高校に入って妹に好きな人ができた。

双子特有の相手の気持ちが理解できるテレパシーのようなもの。


こんなところまで一緒なのはさすがにマズいか……。

気が付いたら私までその人のことが好きになっていた。


家族だから。

姉妹だから。

双子だから。


妹のことを大事にしないと。

だから私は好きになった男の子を忘れ去ろうと努力した。

そう強く願っていたら、ある日、妹の気持ちが汲み取れなくなった。


表面上は何も変わらない。

今までどおり仲の良い姉妹。


でも、なんだか怖い。

妹がとても遠くに離れてしまったように感じる。


お願い。

もう一度、あなたの心の声を聞かせて?









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