ちーちゃん (「わたしのアイドルコンテスト」応募)

愛田 猛

ちーちゃんの思い出


乃木坂46というアイドルグループがある。


出来たころは「AKB48の公式ライバル」という設定だったが、今はもう乃木坂をを知っていてもAKBはピンとこない、という人も増えただろう。


アイドルというのは、普通は若い時期の数年間を駆け抜けるものだ。

そして数年後に引退し、そこから違う道を歩む。


(最近ではももクロのように結婚しても続ける場合もあるのだが、それは別の話。)


なので、グループには旬の次期とそうででない時期が損じしています。

それを防ぐため、新陳代謝を促すシステムがある。


メンバーの追加加入だ。


同期がライバルと思っていたら、いつの間にか後輩がやってくる。

妹のように可愛がっていても、いつか自分の場所を取られてしまう。


結局は寝首をかかれるかもしれない。そんなシステムんだのだ。


乃木坂を初めて生で見たのは、赤坂ACTシアターだ。16人のプリンシパル、という演劇だが、これはある意味すごいシステムだ。


前半でミュージカルをやり、その幕間で投票をする。その投票で後半の役が決まるという、究極のサバイバルシステムだ。


それを二列目で見た。

女の子たちが一生懸命演じる。だが、配役の自己紹介のときのほんの数十秒で、投票にかかわるかもしれないのでみんな必死だ。


なので、かなりみんなに好感度がもてた。なお、前半の配役は毎日変わる。それによって、不公平感を無くすのだ。


ちなみにその時には交換留学(笑)で松井玲奈が来ていた。


乃木坂を見るのが初めてがった僕には、松井玲奈以外のメンバーの顔と名前は一致しなかった。


だが、この「16人のプリンシパル」を見て、乃木坂に興味を持つことになった。


特に、神宮球場のダブルアンコールを見られたのは良い思い出だ。人々が退場を始めたのに、アンコールで再度登場。  


会場を出た人たちの怨嗟の声がネットにあふれたっけ。


さて、乃木坂に興味を持つようになると、出演するテレビ番組も見るようになる。


それが「乃木坂って、どこ?」(乃木どこ) である。その後

「乃木坂工事中」(乃木中)になる。



この番組では、前で踊る選抜メンバーだけでなく、アンダーと呼ばれる、いわゆる「その他大勢」もうまくいけばスポットをあててもらえる。


だからこそ、短い時間で自分をアピールしたいと皆必死になる。


うまくキャッチフレーズや決めぜりふ、目立つキャラ付けができるかどうか、女の闘いである。

ポンコツのキャプテンとか、「ひめたんビーム」とか、そんな感じで司会のバナナマンがうまくいじってくれれば目立てる。


だが、全員にその機会があるわけでもない。また、録画の時に頑張ってもオンエア時にカットされて涙を流したメンバーも多いだろう。


また、最も注目される企画として、番組で次の曲の選抜メンバーも発表する。枠はだいたい一桁だ。


名前を呼ばれると、ほっとするメンバー、喜ぶメンバー、平然としているメンバーなどいろいろだ。


たとえば白石美穂など、「当然よね」と言った顔をする。 生田絵梨花などは、顔がほころぶ。 桜井玲香は、キャプテンの重圧もあるのだろう、ほっとした顔をする。


カメラは、選ばれないメンバーの顔も容赦なく映す。だんだん不安が募る顔、(あ、あと何人で、誰が残ってるから自分は無理だ)と諦めを魅せえる顔、「チャンスがあるかも」と祈る顔。


選抜メンバーと、選ばれないアンダーの明暗は別れる。


メンバー内でどんなに仲良しでも、選抜とそうでない者には明確な差が出て今うからだ。


選抜は毎回入れ替わるし、人数も変わる。

だから、誰も安心はできないし、アンダーも希望を持つ。


秋元真夏のように、休んでいて復帰したらいきなり選抜されて、周りから怨嗟の目で見られたりエコヒイキだと批判されるケースだってあるのだ。


ちなみに、アンダーでもテレビ番組で歌うし、選ばれれば紅白にも出る。その他大勢として踊るのだ。 46人いる、と期待されているので、にぎやかしも必要なのだ。


一応歌も歌うのが、マイクに音は通らない。 マイクのチャンネル数は限られているので、全員分の音を別々に披露ことができないのだ。 だから、マイクをつけて踊っても、そのマイクはダミーということになる。


今まで名前をあげてきたメンバーは、大体有名(ひめたんこと中元日芽香はBABYMETALのSU=METALの姉でもあるが、心に支障をきたして引退し、今は経験を生かして心理カウンセラーをやっている)だが、選抜としてはあまり光があたらなかったメンバーの一人について書いてみたい。




名前は「ちーちゃん」だ。


ある日彼女は、乃木中で時間をもらい、セーラー服でダンスを披露した。

その時のダンスが強烈に印象に残り、僕は彼女を追うようになった。


当時、彼女は大学生だった。


容姿はもちろん可愛いが、それは乃木坂にいたらほぼ前提条件だ。


それに、結構似た顔の子もいたりして、区別をつけにくい人もいたようだ。


言ってしまえば、目立つ特徴に欠けてしまうのだ。


ついでに言うと、字はちょっと違うが同じ音の苗字が複数いたのも悲劇だ。

〇〇というと、別の子を指すことも多かった。


そして、彼女にはその後あまり目立つ機会が無かった。お父さんの影響もあってアメリカンフットボールに興味を持ったりしたが、それでもなかなか話題にならない。


彼女は、「世界ふしぎ発見」に出たい、とブログで書いていたが、そんな機会もなかった。


そして、ちーちゃんはなかなか選抜にも選ばれない。見ているこちらも「またか」と思うようになった。


乃木坂メンバーが野球チームを作って敵(これも乃木坂)と戦うという笑えるドラマもあったが、ちーちゃんは出なかった。


ちなみに高山一実はたしか剣道やってる子で出ていた。一番笑えたのは、インテリとはあまり言い切れない(婉曲表現)秋元真夏が「ハーバード」という役で小難しいセリフを言っていたことだ。




こんな感じで比較的不遇のちーちゃんも大学を卒業するなら、進路を決めない。それに、アイドルにはいつか「引退」の時がくるのだ。


彼女も悶々としていただろう。


そんな時、「夏のFree & Easy」という曲で、ちーちゃんは初めて選抜に選ばれた。

本人も、ファンも皆喜んだ。


これが一つのきっかけで、彼女が選抜に定着できたらいいな、と僕は思った。

もちろん、ちーちゃんもそう思っただろう。



だが、次の曲ではまたアンダーに戻ってしまった。



その一方で、彼女は「世界ふしぎ発見」に出演することができた。そして、なぜか(笑)、そのことがスポーツ新聞に大きく取り上げられた。


(夢がかなってよかったね。ちーちゃん。)僕は心の中でこっそり話しかけた。





結局ちーちゃんはその後の選抜には入れなかった。そして大学卒業とともに乃木坂も卒業することになった。


だが、秋元さんの配慮か、それとも局側の忖度か、はたまたバーターか、それとも本当に本人の実力かはわからないが、彼女はテレビ朝日にアナウンサーとして採用されることになった。


(ちなみに世界ふしぎ発見はTBSだ。)



ある時にテレビをつけたら、ちーちゃんが出ていて、紅白に出たときのことを語っていた。


(きっと、これでよかったんだな。これからはアイドルではなく、アナウンサーとして頑張ってな。)


僕はそう心の中で話しかけた。


それが彼女を見た最後だ。


僕が追ったのは、「アイドルとしてのちーちゃん」であり、アイドルを卒業した彼女を追うのは違うと思えたからかもしえrない。





ちーちゃんの名前は、斎藤ちはる。




齋藤飛鳥でも、斉藤優里でもない。

多くの人にとっては「第三のさいとう」だ。


だが、僕にととっては、乃木坂の「さいとう」といえば斎藤ちはるだ、


ちょっと不遇だったちーちゃん。


だが、僕にとっては「アイドル」という単語に結びつく名前のひとつとして、ずっと記憶に残っている。



(完)



==================

目指せ高山一実賞!(笑)


それはさておき、どこかでちーちゃんがこれを見てくれたら嬉しいな、と思う。


え?作者の他のタイトルを見てドン引きするって?(笑)



あ…応募期間って3月3日以降だったよ…その時再投稿しますのでよろしく!






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ちーちゃん (「わたしのアイドルコンテスト」応募) 愛田 猛 @takaida1

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