第8話 テントで。

深夜、エクワイアから、帰宅したHは、マリーが起きてくるのを待つ。

マリーが寝袋から身をもたげ、Hのいるテントの表のテーブルに食事を運ぶ。

まず、マリーは、Hに、コーヒーを入れる。カップにHの好きなブラックコーヒーだ。砂糖もなし。ミルクもなし。その代わり、少量のリキュールを垂らす。これで、ただのブラックコーヒーとは、少し味が違う。Hは、軽く酔いが回る。煙草に火を点けた。そして食事をする。

Hは、マリーに、エクワイアであったことを報告する。

「今日、オーナーに、人殺しの闇仕事をやるように命令された。」

「えっ。それで、あなたは、どうするの。」

「やるしかないじゃないか。報酬は弾むけどな。」

「どんな人を殺すわけ。」

「一応警察のお墨付きの人物をやるのさ。」

「おかしいわね。そういうことは、警察の専門ではないの。警察が取り締まることではないの。」

「ところが、警察が殺人を進めるのさ。我が店にね。」

「なんか怖いわね。あなたは、大丈夫なの。」

「まだ何とも言えないけどな。やってみないとわからない。」

Hは、サラダを口にほおばる。パンをちぎる。コーヒーを飲む。

マリーは、Hの前で、背筋をピンと伸ばして、椅子に座っている。

マリーは、昼にとっておいた、キイチゴを皿にもって、Hの前に差し出した。

Hはキイチゴに手を伸ばす。口に入れる。


ランプの明かりが揺れる。二人をやんわりと光が包む。

ロブ・ノール湖で、魚がはねた。

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