私はそれでも彼を……

久遠 れんり

男女の友情

 彼は、ずっと好きな人。

 だけどその心に蓋をしたまま、友人として彼の愚痴を聞く。

 そんなにイヤなら別れなさいよ。

 言いたい言葉。私の本心。

 でも私は……


琉翔るいと、女の子には辛い日とかあるのよ」

「何だよそれ?」

 私は声を潜めて、彼に顔を近づける。


「生理の日とか、キツい人は大変みたいよ。私は軽いけどさ」

「そうなのか?」

「うん」

 会話をしながら、私の目は動く彼の唇を見つめる。

 幾度かしたキス。

 でも彼は、それを知らない。


 私の前で、無防備な姿をさらす彼。

 付き合いは、高校に入ってから。


 部活のマネージャーと選手。

 でも怪我とかをすると、わたしの横にいてくれる。

 彼は、無論選手としても一流。


 皆が認める期待の星。


 そんな彼にくっ付いている、馬鹿な女がいる。

 身の程を知らず、彼を振り回し、我が儘放題。

 彼は腐れ縁だと言って、笑って許す。


 幾度か、別の男をけしかけた。

 でもね、以外となびかない。

 まあね。

 琉翔みたいな、いい男を知っているから、見劣りをするもの…… その位の判断は出来るのね。


 バカのくせに……


 でも今度はどうかしら?


 私は、一線越える。

 伝手を使い、彼女を襲ってくれる、下種な男達を雇った。


 だけど、テニス選手として大事な利き腕を折ってまで、彼は彼女を守った。


 悔しい悔しい悔しい……



「どうしてあの位、出来ないのよ」

 失敗したくせに、お金の無心にやって来た彼ら。


「あのやろうが、あんなに強いとは思わなかったんだよ」

「なあ?」

「おう、殴っても目が死なねえ。ちっとビビっちまった」

 失敗したくせに、ヘラヘラと……


「まいど……」

 お金を渡す。その時に、イヤな予感はした。

 目の前にいた男が、何か合図をした。


「なっ」

「いやあ、やる気満々だったしな。よくみりゃあんた」

 その時マスクが盗られた。


「いやっ」

「やっぱり、良い女だ。代わりに可愛がってやるよ」

「ふざけないで」

「いやあ、俺達こう言うときには真面目だぜ」

 口を押さえられて、羽交い虐めにされる。


 なんていう力、動けない。

 ふざけないでよ……



「―― まさか初めてだったとか、いきなりで三人、良い経験できただろ。何かあったら呼べや」

 彼らは笑いながら行ってしまった。


 実際の時間は判らない。でも何時間も、永遠に終わらないかと思って泣いてしまった。

 だけど、そんな私を笑いながら、彼らは私の体を弄んだ……


 彼に捧げるつもりだったのに……

 あんな下種に奪われた……


「こうなったのも、あの女のせいよ」


 私は、必死で立ち上がり、あちこち違和感のある体をなんとか前に進ませる。


「許さない、絶対に許さない…… あの女……」

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私はそれでも彼を…… 久遠 れんり @recmiya

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