第7話「叫ぶ」
啓蒙を目的にわたしを使わないでください。
わたしは人々が親交を深めるための場所です。
宗教的な目的でわたしを使わないでください。
わたしは地域の人々が交流を持つための場所です。
個人の営利目的でわたしを使わないでください。
わたしは人々に平等な安らぎを過ごしていただくための場所です。
犯罪目的でわたしを利用しないでください。
わたしは人々の笑顔を集めるための場所です。
常日頃、わたしはそう祈っているのに、どうしてでしょう、人間というのは、私利私欲であったり個人の我が儘としか形容のしようのない理由で、わたしを利用するのです。
清掃員の人々ですら、時にわたしをぞんざいに扱います。
もちろん、わたしは人間によって生み出されましたから、生みの親に対して文句を言いたくはないのですが、それでも、地域の交流の場という使命を持って生を受けた身としては、この現状に不満を抱かずにはいられないのです。
そこでわたしは考えました。
わたしを誤った目的で使用する人間を、ちょっとした方法で懲らしめてみることにしたのです。
するとどうでしょう。
最初はわたしを所有する団体が故障がどうとか修理がどうか言っていたのが、わたしを誤用する人間が減らないことでわたしがそれを正していると、わたしを取り壊すと言い出したのです。
人間とは、なんて身勝手な生き物でしょう。
ですから、これは誰にも読まれることのない遺書なのです。
わたしの取り壊しは二日後に迫っています。
わたしの跡地がどうなるか、わたしには知る由もありません。
しかし、もし建物ができるのであれば、わたしのような不運に遭わないことを切に願うばかりです。
(了)
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