コンビニ強盗
海乃めだか
コンビニ強盗
夜のコンビニ、蛍光灯が静かに店内を照らす中、自動ドアがスッと開いた。黒いフードをかぶった男が現れ、右手にはナイフが握られ、刃先が微かに揺れている。レジに立つ佐藤健太は一瞬目を上げたが、表情を変えなかった。
「いらっしゃいませ」と、彼は反射的に言った。
男はカウンターに近づき、低い声で威嚇した。「金を出せ。レジの金を全部だ。早くしろ!」
健太はゆっくりと手を動かし、レジのボタンを押した。「お預かりいたします」と言う。男が一瞬眉をひそめる。
「何? お前、ふざけてんのか?」男はナイフを突きつけてくる。
健太は動じず、レジから千円札と五百円玉を取り出し、カウンターに並べた。「袋にお入れしますか。」
男は目を丸くした。「は? 袋? お前、正気かよ! 早く金渡せって言ってんだろ!」
健太は紙幣と硬貨を丁寧に袋に入れ始めた。動作は機械的で、まるで弁当や飲み物を包む時と変わらない。「袋にお入れします。少々お待ちください」と淡々と呟く。
「お前、マジで頭おかしいのか!」男は苛立ちを隠せず、ナイフを振り上げた。だが、その瞬間、健太はカウンター下の非常ボタンをそっと押した。けたたましいサイレンが店内に響き渡る。
「ありがとうございました」と健太は言った。まるで取引が終わったかのように。
男は慌てて出口に向かったが、遠くでパトカーの音が近づいていた。自動ドアが開き、男が夜の闇に消える直前、健太は最後に一言付け加えた。
「またのご来店をお待ちしております。」
店内は再び静寂に包まれた。健太はレジを閉じ、棚の整頓に戻った。
コンビニ強盗 海乃めだか @medaka2025
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