第2話
――――――――………
澄んだ空気の中…
涼やかな風に乗せられて
運ばれた第一声は。
「おや、これはこれは…お早うございます」
…勿論、天使の皮を被った黒い笑顔の皮肉めいたご挨拶。
「残念ながらこれは朝メシでも…昼メシですらないけどな」
既に料理の並べられたテーブルに着いたギルがニヤニヤ顔で言う。
「にしても今更見せ付けんでもええよー?」
『…違っ…これは…!』
「若いって良いわねーえ」
『だから…ああもうっ』
だから嫌だって言ったのに…!
皆の冷やかしに堪えられず、振り向いた先の首に抱き着いた。
「出来もしない言い訳は止めておけ」
恥ずかしくって最早涙目の顔を隠すあたしに降り懸かるのは、慰めでも謝罪でもなく…いつもの溜め息。
『…誰の所為で…!!』
一体誰の所為でこうなったとお思いですか…!!?
「…だから後悔するなと」
言っただろう?…そう言う顔はいつになく楽しげで…やっぱり格好良いから何も言えなくなる。
…なんであたしがデュークにお姫様抱っこされて夕食の場に現れたかって…説明するのも赤面物だ。
昨日初めてだったっていうのに寝たのは外が明るくなった頃で…只でさえ疲れてたこの身体をあの後もこの方は更に激しく愛して下さいまして。
『…デュークの意地悪』
…腰から下が自分のじゃないみたいで歩けもしないんです。
「お前が悪い」
く、と笑って、あたしを抱えたまま席に腰を下ろしたデュークは、あたしの頭をくしゃくしゃにして皆に言い放つ。
「これをあまり虐めてくれるな…宥めるのも一苦労だ」
「その割には珍しく御機嫌麗しいようで、デューク船長?」
わざと仰仰しく尋ねるギルに、デュークは小さく笑って答えた。
「…どんなに厄介な猫でもこれ程懐けば…愛着が湧くというものだな」
ぐりぐりと雑に頭を掻き撫でた手は、あたしを前向き座らせて優しく腰を抱く。
「なんかもう…ご馳走様って感じだな」
「…ほんと、お腹いっぱいよアンタ達見てると」
「………うっす」
「え、ウチは食べるで!?」
いただきまーす、と呆れ顔の皆を余所にシャロンはテーブルの上の料理に手を付け始めた。
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