Ⅶ・Amethyst Stream

神の巡り合わせ

第1話

―――――――………






心地好い揺れと…


小さな窓から


差し込む光が


瞼を開かせようとする







…まだ…


こうしていたいのに。







「……漸くお目覚めか…?」




それでも耳元で囁く低音に…優しく意識を起こされる。




『…まだ…寝てるよ…』



ぎゅ、とその首元に顔を埋めて応えると、ふ、と小さく笑った声は言う。




「嘘吐き…もう昼だ」




しっかりと抱き締め直してくれる腕は温かく…大事にそうに黒髪を撫で下ろした。



「好い加減顔を出さないと…後で煩く言われる」



そう言ってあたしを宥めるような声とは裏腹に、その腕はいつまでもあたしを包んでいてくれる。





『…や…まだ行かないで…?』




…昨日は…


幸せ過ぎる程の夜だった。



二人の想いが漸く通じ合って…何度も何度も重ねた唇で、肌で…朝までそれを確かめ合った。


一晩中愛し合っても…まだひと時も離れたくないと思ってしまうあたしは重症なのかも知れない。







「…この期に及んでその顔は狡いな」




胸の中から見上げた顔は…困ったように溜め息をつく。










「……離す気が失せる…」








―――――――ちゅ…






何処か諦めたようなデュークはぐい、とあたしの顎を攫っていき、唇を奪う。




『…ん…デューク…』




身体を返したデュークのキスが真上から降り注ぎ…頭の中はまた夜のように甘く侵されていく。









『………好き』





…大好き。








「……知ってる」





不敵に笑ってそう言うデュークの唇は…優しく優しく再び口付ける。





『…言うと思った』



でも…あたしも知ってるよ?意地悪は…言葉だけだって。





その唇は…素直に


伝えてくれてるって。



だから…






『……もっと…頂戴?』





指先で示して…唇を、強請(ねだ)る。





「……欲張りな猫は…誘い上手、か」






"愛してる"…


そう伝える口付けを


もっともっと


浴びせて欲しい










「煽ったこと…後悔するなよ?」





悪戯な微笑は余裕…それでいて、その翠玉は夢中であたしを求めるように熱く瞬いた。








蕩ける程の口付けと


激しい抱擁に身を委ね…


熱いエメラルドに


再び溺れていった

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