A boy meets boys
全くの想定外なんすけど
第2話
初夏の風を感じる
雲一つ無い青空の下…
『………マジすか』
…一人の少年が、
城の前に立ち尽くしていた。
先に断っておく。この俺、
…どうして俺が今、勇者さながらに巨大なる城を見上げているかと云うと…事の始まりは一ヶ月前に遡る。
――――――――………
「母さん達、イギリスに行くことになったから♪」
…え?いぎり…って。
『……………はぁ!?』
…何ソレ。何アンタ、「コンビニ行ってくるから♪」みたいなノリで言ってんだよ?
「お父さんが転勤になっちゃって…母さん、寂しいから付いてくことにしたの」
えへ、と甘えて笑ってみせたのは、高校生にもなる息子を持つ母。余所の保護者に比べればまだ若い方だとは言え、そのぶりっ子はあんまりだ。寒いと言い切りたいのに、無駄に可愛いから許してしまいそうになるのがまたあんまりだ。
『じゃあ俺独りでどーすんだよ!?』
そう、そんなことより、だ。高校に上がったばっかりの息子ですよ?家事も何も右も左も分からない子ですよ?それを置いていくって言うのこの両親!
「あら、貴方も全寮制の学校に編入してもらうから大丈夫よ」
『は…編入!?してもらうって!?しかもこの時期!?』
「編入願いは出しておいたから、後は一応試験だけ受けて来てね?」
『んな横暴な…』
一応って、そんな簡単にアンタ。え、てか待って、この辺でそんな学校って言ったら。
「だってそこならお兄ちゃんもいるし、安心だもの♪」
ですよね。そこしかないですよね。ねえ母さん知ってる?貴女の息子その1はとっても賢いのよ?俺だってそこそこだとは思うけれども…あーもうほんと超進学校の編入試験とかナニソレオイシイノ?
「まぁもう決めちゃったんだし♪」
頑張ってね♪つって、何考えてんすか正気すか。てか語尾に♪付け過ぎなんだよどうしてそんなにゴキゲンなのママン。
…などと心の中で地味に悪態をついている内に、無責任な両親は異国へと旅立って行った。
―――――――……
…そうして判明したのだが、自分もそこそこ以上には出来るコだったらしい。難関の試験も無事にパスして、今日は編入手続きの為、“風蘭学園”たる新しい学び舎に来ている…つもりだった。
『…此処、校門だよな?』
だが、その御立派な門の先に校舎らしきものは見えない。取り敢えず門を抜け、更に奥へと進んでみた。
――30分経過―………
『………何処だよ学校はよぉー!?』
校舎なんてねぇじゃん!!どんだけ歩いても青々とした草木と色とりどりのお花畑しかないってどゆこと?あの門は校門じゃなかったの!?何処の広大なフラワーパークの門だったの!?いくら穏和な(自称)俺でも流石に苛々してくんだけどどうしてくれるの。
『…まさか』
そうしてふと、彷徨う足を止めた。
これはまさか…所謂少女漫画にありがちの、つまりはアレですかい?主人公が迷子になるっつう、お決まりのパターン!?いや実際そんな漫画なんか読んだことないけれども。何にせよ、創作物における王道の序章的状況がこの身に降り掛かって来ようとは。
『全くの想定外なんすけどー…』
歩き疲れた足を再び踏み出して、溜め息を吐く。あーもう良いよ、そしたらどーせ次は王子様にでも出会うんだろあっはっはー…などと開き直って阿保な事を考え始めた時、ぶわっと巻き起こった突風に混じって何かが耳に響いた。
……誰か、いる…?
風の音、だけじゃない。確かに聴こえたのは、くぐもった声と…鈍い物音。そんな人の気配がした方へ向かい、植え込みを掻き分けて覗いてみる。
『…………っ!』
視界の向こうに広がっていた光景に、先ずは言葉が出なかった。鮮やかな芝生に似つかわしくない…血の紅を散らした十人程の男達が、ぴくりとも動かず倒れていたのだから。
そうして…その中心に、
眼を奪われた。
ふわりと風に靡く髪は艶やかな金。地に転がる人を静かに見下ろす、切れ長で鋭い眼。
…恐ろしく整った顔の男が、そこにいた。
遠目からでも窺えるその美貌に釘付けになっていたが、不意にその男が此方に視線を向け、反射的に肩が跳ねる。目が合ったような気がして、その一瞬、時が止まったかのようにすら感じた。しかし男は表情ひとつ変えず、躊躇いなく踵を反して足早に去って行った。
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