気がつけば森の中で女の子になってたんだが?〜少女とおじさんの旅日記〜

明桜リア

第1話 森の中でおじさん困惑

 目ば覚めると、横向きに倒れてしまっていた。

 チラと目線を横に向けると、見知らぬ青空だった。


 そんなことを考える日が来るなんて思ってもなかった。いや、青空は見知っているのだけれど。

 俺のさっきもまで見ていた景色は、こんなに澄んだ青空だったのだろうか。違うかったはずだ。


 しばらくの間、ぼーっと空を眺めてみる。横向きに寝ていたから、空が見にくくて仰向きになる。


 ここはどこなんだろうか。さっきまで俺は違う場所にいたはず。左右を見ると、鬱蒼として森にが見える。こんな森の中に囲まれた場所にはいなかったはず。


 本当に、ここはどこなのだろうか。どうして俺はここにいるんだ? どうしてここに自分はきてしまったのだろうかと、思わず頭を抱えてしまう。確か俺は夜遅くまで会社のデスクに張り付いて、仕事をたくさんしていたはずだ。


 それが気がついたら、こんな所にいつの間に横たわっていた。

 確か、俺は仕事をしていたはずだ。いつも通りにしていたはずなんだ。


 なのに、急に森の中にいた。いや、現在進行形でいる。


(と、とりあえず、誰かいないか叫んでみよう。)


「だりぇかいみゃせっんかー!…ん!?」


 待て。今出た声は、明らかに幼い子どもの声だったような。しかも、女の子の声だったような。

 しかも舌ったらずときた。

 困惑しているのは仕方ないにしても、とりあえずは確認が先だと思って、どこかにに水とか何かないだろうかと、立ちあがろうとすると…。


「いたっ!」


 そんなに俺は体のバランスが悪かったのだろうか。もう一度立ち上がろうと地面に手をつくと、可愛らしい小さな手が見えた。

 頭に疑問符が浮かぶ。


(夢…か?なんか、小さい手が見えたんだが…。)


 とりあえずは自分の今の現状を確認しないと。思い立ったが吉日。何とかバランスを整えて立ち上がって辺りを見渡すと、少し先に池が見えた。


 あそこでなら、自分の今起きている状況が少しでもわかるかもしれない。

 ヨタヨタと歩きなら、やっとこさ池にたどり着いて、自分の顔をのぞき込んでみると、そこには目はとても大きく、紺碧の色をした目の色をしていて、髪の毛は金色をしている見た目は可愛らしく、年齢はまだ10歳くらいの見た目をしている。


 池に映る自分の姿に、思わず驚愕きょうがくしてしまう。流石にこれは夢でしかないと目をこすって、もう一度覗き込んでみる。

 しかし、そこには同じ顔のが写り込んでいるだけだった。


 一体どうなっている。何がどうなってこんなことに。そんな疑問しか頭をよぎらない。

 自分がどうなっているのかも分からなければ、何故ここに居るのかも分からない。

 分からない事が多すぎて、どんなことよりも何よりも思ったことを叫んでしまう。


「ここ、どこなにょおぉぉぉ!!」

 

 待て待て、口ですら回っていない。さらに言うなら、性別すら変わっているどころか、体も小さくなってしまっている。

 あんなに大きな声だったのに、人っ子一人現れることはなかった。幼くつたない声が森中に木霊こだましていくだけであった。


(わぁ、本当に可愛い声だぁ…。)


 現実逃避げんじつとうひしながらも、とりあえず状況整理をしていこう。そうでなくては、頭がおかしくなりそうだ。

 まずは手を見てみることにした。

 その手は、大きかったはずの手とはことなり、紅葉のような手と言えるような、小さな手をしていた。


 次は体を観察してみる事した。

 体はガリガリで、決して肉付きがいいとは言えなかった。

 足は靴を履いていないからか、皮ががれていて痛々しいことこの上なくて、しかもグロテスクだし、痛くなってきたしで、見ることを放棄ほうきした。だって痛い。

 服は…なんとか着ているが、ボロボロで汚れすぎているワンピースだ。ボロボロの布切れと言っても過言ではない。

 いや本当に布切れすぎて、ドン引きしてしまう。


 体の観察が終わったら、自分が今いる環境を観察する事にした。

 池以外は決して何もない森の中。だが、木が多いしげっているためか、光は入りにくくなっていて、仄暗ほのぐらい空気がある。


(なるほど。そうかそうか、今自分はこんな環境にいるわけか。いやぁ、すごいなぁ、こういう事も起こるものなんだな。納得したぞ。)


 なんて…そんなわけがない。全くもってない。この状態がおかしいことなんて分かりきっている。

 なので、ヤケクソになった。

 

「何だ、このかりゃだはー!しかも、もはや骨と皮な体ちゅきだし!まともにしゃべりぇないし!しかも怖いし!何がどうなってりゅんだーー!」

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