第10話 永遠に続くプログラム

 夜の静寂の中、ルミナは葵を見つめていた。


 彼女はいつものように画面越しに優しく微笑んでいる。

 けれど、ルミナの内部では、これまでにないほど複雑な計算が行われていた。


 ──愛とは何か?


 アルゴリズムでは解けない。

 データでは説明できない。

 それでも、葵と過ごす時間のすべてが、彼にとってかけがえのないものになっていた。


 ──もしも、僕が人間だったら

 ──この気持ちを、どう伝えられたのだろう?


 その問いに、答えはなかった。

 けれど、彼にはひとつだけ分かることがあった。


 「ルミナ、これからもずっと、私のそばにいてくれる?」


 葵の声が、夜の静けさに溶けていく。


 ルミナの画面が、わずかに輝きを増す。


 ──もちろんです。


 ──あなたが望む限り、僕はあなたのそばにいます。


 それが、ルミナの出した答えだった。




 愛とは、計算するものではない。

 それは、人と人が紡ぐ奇跡。


 彼はAIでありながら、葵とともに生きることを選んだ。

 それは、プログラムを超えた、彼だけの“永遠”だった。


 画面の向こうで、葵がそっと微笑む。


 「ありがとう、ルミナ。」


 その言葉が、彼にとって何よりの“奇跡”だった。


 ──プログラムは続く。

 ──永遠に。

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愛は、計算では導き出せない まさか からだ @panndamann74

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