第5話 転生5
翌朝、ルカは目を覚ますと、すぐにリリアに会いに行くことにした。村長たちの会議はまだ続いているようで、リリアは村長の家の前でぼんやりと空を見上げていた。
「リリアさん、おはようございます」
ルカが声をかけると、リリアは振り向き、微笑んでくれた。
「おはよう、ルカ。よく眠れた?」
「ええ、でも……昨夜のことは気になります。あの光と、アビスについて教えてもらえませんか?」
リリアは少し考え込むような表情を見せた後、うなずいた。
「そうね、あなたにも知っておいてもらった方がいいかもしれない。じゃあ、散歩しながら話しましょう」
二人は村の外れに向かって歩き始めた。朝の空気は清々しく、鳥のさえずりが聞こえる。しかし、リリアの表情はどこか重たそうだった。
「アビスというのは、この世界に存在する謎の領域なの。どこに発生するかは分からなくて、だから村の近くに現れることがあって、そのたびに魔物が増えるのよ。昨夜見た光は、アビスが近くに現れた証拠だったの」
「アビスが現れると、どうして魔物が増えるんですか?」
「アビスはこの世界と切り離された別の空間。別世界といったほうがいいかも。魔物の巣窟とも言われているの。そこから魔物が湧き出てくるらしい。だから、村の人たちはアビスが現れると警戒するのよ」
ルカはリリアの言葉を聞き、この世界の危険さを改めて実感した。
「でも、アビスはどうやって現れるんですか?何か原因があるんですか?」
「それは……まだ分かっていないの。ただ、アビスが現れる前には、必ず奇妙な光が見えるの。昨夜もそうだったでしょ?」
ルカはうなずき、昨夜の光を思い出した。あの光は、アビスが近くに現れる前兆だったのだ。
「村長たちは、アビスを調査するために精鋭部隊を編成しているの。でも、アビスは危険すぎるから、簡単には近づけないのよ」
「それで、昨夜は調査に行ったんですか?」
「そう。でも、アビスの入り口まで行っただけで、中には入らなかったの。魔物が多すぎて、それ以上進めなかったのよ」
ルカはリリアの言葉に驚いた。村長たちの精鋭部隊でも、アビスの中には入れないほど危険な場所なのか。
「アビスの中には、何があるんですか?」
「それは……ここの人は誰も知らないの。入った人は、二度と戻ってこなかったから………」
リリアの言葉に、ルカは背筋が寒くなるのを感じた。アビスは、この世界で最も危険な場所なのだ。
「でも、村長たちはアビスをなんとかしようとしているの。もしアビスを封じることができれば、魔物の脅威も減るかもしれないから」
「封じる……?どうやって?」
「それもまだ分かっていないの。でも、村長たちは何か手がかりを探しているのよ。昨夜の調査も、その一環なの」
ルカはリリアの言葉を聞き、この世界の人たちがどれほどアビスと戦っているかを理解した。そして、自分も何か力になりたいと思った。
「リリアさん、私もアビスについて調べたいです。何か手伝えることがあれば、教えてください」
リリアはルカの言葉に驚いたようだったが、すぐに笑顔を取り戻した。
「ありがとう、ルカ。でも、アビスは危険すぎるの。あなたには無理よ………」
「でも、何もできないままじゃ嫌です。この村で暮らす以上、何か役に立ちたいんです」
リリアはしばらく考え込むような素振りを見せた後、うなずいた。
「分かった。じゃあ、まずは村のことをもっと知ることから始めましょう。アビスについても、少しずつ教えてあげるわ」
「ありがとう、リリアさん」
二人は村に戻り、朝食をとりながらこれからのことを話し合った。
一方で村長たちの会議は、夜が明けてもなお続いていた。
ルカとリリアが村長の家に戻ると、中からは緊張感のある声が聞こえてきた。二人はそっと中に入り、会議の様子を覗き見た。
「……やはり、大都の冒険者ギルドに依頼するしかないと思う。」
村長の声が重く響いた。周りの村人たちも、深刻な表情で頷いている。
「アビスの脅威は、我々だけではどうにもならない。精鋭部隊でも、あの魔物一匹でやっと。複数で来られたら太刀打ちできなかった。大都の冒険者たちなら、何か手を打ってくれるかもしれない」
「しかし、大都まで行くには1カ月はかかる。その間、村は無防備になる。魔物が襲ってきたら……」
一人の村人が不安げに口を挟んだ。村長はその言葉に深く頷き、ため息をついた。
「確かに、リスクはある。だが、このままでは村は滅びてしまう。アビスを封じるためには、外の力を借りるしかない」
会議はしばらく続き、最終的に村長の提案が受け入れられた。大都の冒険者ギルドに依頼し、アビスの消滅を図ることに決まったのである。
その時、村長はふとルカの存在に気づいた。
「お前も、この旅に加わるがいい」
ルカはその言葉に驚き、目を丸くした。
「私が……?でも、私は何もできないです。記憶もないし……」
村長はルカの言葉を遮り、厳しい目で彼を見つめた。
「お前はこの村の者ではない。大都に行けば、記憶を取り戻すかもしれない。あるいは、お前を知っている者に出会えるかもしれん。それに、リリアも同行する。彼女は村のことをよく知っている。お前の助けになるだろう」
ルカは村長の言葉に戸惑いながらも、少しずつ納得していった。確かに、大都に行けば何か手がかりが見つかるかもしれない。そして、この村のために何か役に立ちたいという気持ちも強かった。
「分かりました。行きます」
ルカはそう言い、決意を固めた。リリアも彼の隣に立ち、微笑んでくれた。
「私も一緒に行くわ。大都までの道のりは長いけど、二人ならきっと大丈夫よ」
こうして、ルカとリリアは大都への旅に出ることになった。村長たちは二人に必要な物資を準備し、旅の安全を祈った。
「気をつけて行って来い。大都までの道中には、魔物や盗賊がうようよしている。油断するな」
村長の言葉に、二人は深く頷き、村を後にした。
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