第2話 賢者タイム

 お客様が果てたあとは、短いコースであればこのまま少し雑談してシャワーを浴びて退室という流れになるが、通常コースであれば二回戦に突入する。


 復活するまではしばらくの休憩時間、所謂『賢者タイム』をいかにうまくつなぐかは一つ大きなポイント。


 ——適度なボディタッチ、水分補給、そして当たり障りないけど楽しい会話が重要なのよね。


 この時間をプレッシャーに感じている女の子も多いけど、あたしは意外と会話は得意なほうだ。


「腕枕、貰ってもいいですか?」


 こうやって甘えてぴったりとくっつくか。

 逆にお客様の国の下に腕を回して引き寄せておっぱいを眼前に差し出して、イチャイチャ触り合ったりしながら会話をするとか。


「やっぱり、体の相性が良いと、会話も相性も良くなるんですね」


 そう言ったら、ヤマさんは大笑いしていた。

 そんなヤマさん相手には、他のお客様には絶対言わないような私生活も、お店や風俗にまつわるエトセトラなんかも、結構赤裸々に話をしている。


「ワカバちゃん、WEB小説とかエッセイとか読むって言ってたよね? 書く方は?」

「えっと、あたしは読むだけですよ」

「今度、体験談とか書いてみたらどうかな?」

「え?」


 ——ヤマさんって……たまに突然、突拍子もないことを言ってくるよね?


「いつも写メ日記上手く書いてるなあと思っててね。あの調子で体験談を投稿したら盛り上がると思うんだよね」


 いつになく真顔のヤマさん。

 ちょ、ちょっと待って。


「いやいや、そんな才能無いですって」

「男を手玉に取る会話術も生かせると思うよ」

「手玉にとってませんから!」


 ヤマさんの意地悪い顔。

 

 ——まったく。そういえば、以前はアイドルになれるんじゃないかとか無謀なことを言いだしたこともあったわね。本当に冗談にもほどがあるわ。


 プロフィール年齢二十七才の割に童顔とはいえ、自己評価でいえば顔は中の上。

 おっぱいは大きいから好評だけど。

 肌もケアの成果が認められて褒められることも多いけど。

 でも、おなかはやや(?)ぽっちゃり。

 アイドルどころかAVにも採用されないだろう。


「もう。変なこと言うヤマさんにはお仕置きが必要ですね」


 こうやって会話しながらも、あたしは体内時計とヤマさんの体の反応のチェックを怠らない。


 ——そろそろ、賢者から野獣に戻ってもらわないとね。


 自分のおっぱいをぴったりとヤマさんの胸にくっつけると、再び右手を下の方へと伸ばした。

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