「可愛いで世界を満たそう」

　わたくし、一つやりたいことがあります。

　それは世界を『可愛い』で埋め尽くしてしまいと思っているのですよ。

　わたくしは幼いころは病でいつも伏してました。

　治らない病ではなかったのですが、わたくしが育ったのはキリスト教系の団体が運営する村でした。

　「聖書の記述をしっかりと守り電脳が復旧する以前の生活をしよう」という団体。

　そのせいか、医者などを嫌い、「神の加護がありますよ」と祈るばかりでちっとも治りません。

　私は差し入れられた「不思議の国のアリス」だけを頼りに生きてきました。

　初版ではなく子供向けの可愛らしい絵柄の本でした。

　ですが、私にとっては唯一の心の支え、何度も読み返したもの。

　しかし、ある時、密かに電脳へとアクセスする方法を持っている信者が遊び半分に、わたくしに電脳へのアクセスの方法を教えました。

　そして、ネット上へと意識を飛ばせるようになって知りました。

　――「この世には聖書で語られるように清らかな人間などいない」ということを。

　そして、わたくしは思いました。この世界に清らかなものがないのなら、わたくしが愛した「可愛いもの」で満たしてしまいたいと。

　そして、大きくなったわたくしは――村を後にしました。

　とても良い経験をさせていただきました。

　成長したわたくしはとても奇麗に育ち、わたくしに密かに言い寄る人には事欠きませんでしたから。

　ですから、彼らで様々なことを試させていただきました。

　今はもう、村はありません。

　彼らには糧になってもらいました。

　今、わたくしは教団のトップとなっています。

　電脳が敷き詰められて久しく、人々は身体を改造し、ネット上に意識をつなげられるようになりました。

　しかし、人間であることはかわりません。

　ですから、わたくしはこの世界に馴染めなかった異端や才能のある人たちを保護しました。

　団体としてまとめあげ、癒してさし上げることにしました。

　そこから出た成果をもとに、投資を募り、さらに勢力を広げていくことに成功しました。

　さぁ、時は来ました、この世界を不思議の国のように可愛らしいもので染め上げてしまいましょう。