怪談の館

星夜とも

第一話 百物語は終わらない

…おや?お客様ですか。…失礼しました。

ようこそ。ここは『奇怪館きかいかん』…お客様方は『怪談かいだんやかた』と呼ばれているそうですがね。今では奇怪館という名前よりも怪談の館と言ったほうが伝わるぐらいになってしまって、あの方々はこの館のをわかっていないのですよ…


おっと、話がそれてしまいました。

わたくしはこの館の主でございます。


…ご安心を。あなた方へは危害を加えることはありません。


じゃあ何をするのかって?

ふふ、それは私が大好きなことを、ですよ。


そう、怪談をお話しましょう!

今日はお近づきの印にとっておきを…



…みなさまは『百物語』というものを知っていますか?

そう。蠟燭ろうそくを百本用意し、順番に怖い話を話す。

一つ話すごとに一本消す。

それを繰り返し、最後の一本。百本目を消したときに何かが起きる。

と、いうものです。

子供の頃にみんなで集まってやったことがある人もいるのではないでしょうか。


そうそう。忘れてはいけないことがありましたね。

それは規則ルールです。

百物語の規則は地域によって違うようですが、今回のお話での規則はこちらです。


一、怪談一つにつき蠟燭を一本消す。

二、蠟燭以外の人工の灯は消せるものは消す。

三、同じ怪談を話してはならない。

四、順番に話さなければならない。

五、怪談を途中でやめてはならない。

六、蠟燭を百本消し終えるまでやめてはならない。


この六つの規則を破るものには明日は来ない。

…なんて言われていました。


では、これにて準備は完了です。


お待たせいたしました。

『百物語は終わらない』開演でございます。



…そう。これはわたくしがとある神社の神主様に教えていただいたお話です。

ある夏の夜。その日は神社に三人の子供があつまって話していたんだそう。

神主様はもう真っ暗になっているのに小学生がいたので注意しようとしましたが、どうやら百物語をしていると気づいたのでそっと見守ってみることにしました。


この三人の子供のうち二人が女の子で名前は春香はるかあおい

もう一人が男の子で海斗かいとといいました。

三人は幼馴染です。


学校が夏休みに入ろうとするころ、春香が言いました。

「みんなで百物語をやらない?」

すぐに二人は賛成し日程、場所を決めました。


ここまで聞いただけではただのかわいい話ですよね。


その年最高気温を更新し、夏が本気を出している八月。

ついにその日がやってきたのです。


僕は二人と約束した神社へ行った。

あたりはもう暗い。僕は急いで向かう。


神社につくと葵が最後の蠟燭に火をつけたところだった。

僕は二人に少し遅れたことを謝り、準備をしてくれていたことに感謝した。

僕たちは蠟燭が百本あることを確認。ルールも確認。

それから僕たちは蠟燭百本を中心に円になって座った。


「じゃあ、始めようか。」


葵、僕、春香の順番で百物語を始めた。


いろんな怖い話をしていった。小学生ならではな話やあまり怖くない話もあった。

中には背筋が凍るような恐ろしい話もあった。


そろそろ怪談も尽きてきた。

あと蠟燭は何本だろうか。

周りは真っ暗だから蠟燭の火を数えるのは簡単だった。


そのときに二人の顔色が悪いのに気が付いた。

やっぱり百個近く怖い話を聞くと怖さとかで顔色も悪くなる。


蠟燭はあと二本だ。春香と葵が話して終わり。

春香の最後の話は怖かった。計画的な葵のことだから一番怖い話は最後にとっておいたんだろうな。

葵は普通にずっと怖い話しかしてない。

でも最後のは百物語をしていた子供たちが最後にお化けに連れていかれちゃう話だったから今百物語をやっていることもあって怖かった。


葵は蠟燭の火を消した。


…みんなの顔色はまだ青い。






…これにて『百物語は終わらない』閉演でございます。


おや?何が怖いのかわからなかったですか?

では、海斗くんになりきって最後まで百物語をしてみてください。

そうすればわかりますよ…


今回のお話はどうでしたか?

またお越しいただければもっと怖いお話をしましょう。


いつでもわたくしは『奇怪館』であなたのことを待っています。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る