【完】イケメン女子大生が口説いてきたくせに付き合ってくれません
トガタリ
プロローグ
抱かれてる時はそんな感じなんだ
――身を焦がす恋をしたことはあるか。私はある。忘れられない人がいる。
薄暗い自室で、カーテンからほんの少し洩れる月明かりの光を頼りに自分の身体を
下着の上から爪で刺激すると、下腹に熱が溜まり始めた。
時間をかけてゆっくりと焦らす指遣いを思い出しながら、情けない声が漏れる。
「は……」
あの人は、どんなふうに私の身体に触れていただろうか。どんな顔をして私を抱いていただろう。
「う、あ」
愛しい人の姿を想像すると、自分の口から情けない声が漏れる。
「……
愛しい人の姿を思い浮かべ、自分の指で自分を慰める。
私の卑猥な姿を興味深そうに観察する彼女の姿を思い浮かべる。
「れーなちゃん」
彼女はこうして、指を焦らしながらくるくると動かすことが好きだった。ピクピクと反応する私の身体を、まじまじと観察しては口角を上げていた。
「れ、いなちゃん……」
一目惚れだった。
黒髪ボブの小柄な彼女は、ちょこちょこと塾校内を歩きまわっていた。ふたりきりになったタイミングで勇気を出して話しかけたのだ。
「ずっと話したいなって思っていて、その、ごめん急に」
「いや別に。私もずっと認知していたし」
初めて話した時、これ以上ないくらいに心が躍った。
胸がどうしようもないくらいに鳴り響いて、自分にはもうこの人しかいないのだと強く思った。不思議な雰囲気を纏う彼女は私の目へ特別に映ったのだ。
「ふーん、そんな感じなんだ」
「そ、んぅ……なって……?」
「抱かれてる時はそんな感じなんだなって」
自分が抱いているにもかかわらず、まるで他人事のように彼女は呟いていた。
「優越感ってこういうことを言うのかな?」
「ん、は、……なに……」
「ふふ、いいよ、別に分からなくたって」
余裕のない私を可笑しく思ったのか彼女は鼻で笑いながら指を動かした。その仕草で彼女の美しい黒髪が揺れる。
「あ、怜奈ちゃん……怜奈ちゃん」
彼女を回想して、まるで目の前にいるかのように彼女と同じ触り方をする。
彼女を思いながら自分を慰める。惨めで情けない行為だと分かっているのに止められない。
「あ、やば……もうだめ、う」
身体の痙攣に追い打ちをかけるように、指を忙しなく動かす。どんどん指の締めつけが強くなる。
「う、あ、れーなちゃん」
身体がひどく緊張し、硬直した。
「あ……」
ぴくぴくと身体を引き攣らせながら、自分を慰めていた指を離した。
意識が明瞭になるにつれて、彼女を使って自分を慰めてしまったことでの自責の念に苛まれる。
「……くそ……」
もう一度、もう一度だけでいいから彼女に会いたい。
恋い焦がれた人の幻を追いかけて、今日も明日も街を歩く。
彼女・
もう一度彼女に会えたら、今度は何もかも捨ててしまおうとさえ思う。
――『イケメン女子大生が口説いてきたくせに付き合ってくれません』プロローグ完。
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