第5話
「そろそろだ」
と親父の声が聞こえる。
「くれぐれもよろしく頼むな」
私は吐き出されるように現実に引き戻される。
はあ、とその声を出して気がつくと
化粧鏡に立っていた。
ここは、ここは現実の世界なのか?
私はその扉をくるっと捻り、その足を進めた。
やはり先ほどのバーである。
私の席にレッドアイが置いてある。
飲みかけではない、
出された状態で置いてある。
私はその席へと座り込み、
バーのマスターへと声をかけた。
「マスター、あれって」
マスターは余白を開けずこう言った。
「ここは月に一度、
会いたい人に会えるように
作られた場所なんですよ」
*
「おかえり」
と声をかけてきたのは娘の葉月である。
私は玄関の前に佇んだ彼女に
向かってただいま、と返す。
潤ったその目から
綺麗な光が見え、こう言った。
「恵美姉ちゃんも見えているかな」
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