三章 6
それからだが、そりゃルーナや村の住民が血であまり汚れていない俺と真っ赤になっているルミエルとを比べて、特に目立つことのなかった自警団のムクルが口うるさく言ってきたが、そもそも戦いの土俵にも入り込むこともできなかったのにお門違いと伝えてやると、ぐったりと項垂れていた。ルミエルがなんかフォローしていた気もするが、こっちとしては勝手にごちゃごちゃ言ってくるのが面倒すぎるんだけど。
そして、俺らは急遽予定を変更して簡単な復興の手伝いをしながら視察をしていった。そんな感じで残りの予定を潰していき今日はラクレエ村から出立する日だ。そんな日に俺とルミエルは誰にもいうことなくひっそりと宿を抜け出していた。
「ありがとうございます。ここまで運んできてくれて」
「シュバルツ山か。変な気分になるなよ」
また、シュバルツ山を見たいと。そんなことを言い出した時にはルーナがまだ目が覚める前だったからあまりリアクションを取ることはしなかったが俺は物音を立てずにルミエルを連れてきた。
「それにしたって一回見たじゃないか何がそんなにいいんだか」
「ぼうっとできるから?」
「なんで疑問形なんだ。まあいいが、あと十分くらいでルーナが起きるからそれまでに戻るぞ」
「このちっぽけな悩みも気圧されそうな雰囲気が心地いい……からでしょうか」
「……」
とても哀愁のこもったその言葉に俺は何もいうことはしなかった……できなかったという方が正しいが。
「ソマチさん、一週間の間ありがとうございました」
「いえいえ、ルミエル様。魔物による被害もあなた様と執事の彼のおかげでひどくはありませんでした」
「この件はお父様に報告をして対策を立ててもらいます」
あの言葉を聞いてすぐに俺たちはすぐに宿に戻った。ついてすぐにルーナが起きていたがなんとか誤魔化すことが出来た。そして、ラクレエ村を出ようとする俺たちの前には村民が集まっていた。皆がありがとう、助かりましたなんて言ってくる。
「ルミエル様、そろそろ出発の時間です」
「ええ、では改めまして、一週間の間ありがとうございました! そして、あなたたちの更なる繁栄を心より願っています!」
こうして、俺たちの仕事は幕を閉じた。
あ、ちなみに帰りにもちゃんと一週間かかったぞ! なんもなくてつまんなかったけどな!
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