一章 3
「何やっているんですか!? ……まさか殺していないですよね」
「殺してはいない……はずです。つい、反射的にやってしまいましたが」
「それ、絶対大丈夫じゃないですよね!?」
私はルーナに気を取られて隙に襲い掛かって来た暗殺者を顔面につい本気の拳を当ててしまいました。そしてものすごい勢いで壁に激突してしまった暗殺者はその顔につけていた仮面もバキバキに割れていました。ルーナは彼に近寄ってどんな状態であるかを確かめに行ってもらいました。
「呼吸は……ちゃんとありますね。それにお嬢様の最後の一撃で鼻血こそ出ていますがそれ以外はこれといった怪我はありませんね」
そのルーナの言葉を聞いて、単純にすごいという感想が浮かびました。私は身体能力が突出しているという自覚もあります。だから私の手加減した拳でも普通の人なら骨が粉々になるというのに顔にいい一撃が入ってやっと鼻血程度になるなんてとても頑丈。それにしてもこの子……
「こんなに幼そうな子が暗殺者なんて世も末ね」
「そうですね。ぱっと見お嬢様と同じくらいでしょうか?」
壁に打ち付けられた暗殺者を私も様子を見るために近づくとそこにいたのはまだ少年と呼べるくらいの幼い男でありました。自身とそう大して変わらないくらいの年齢の子供が暗殺というか裏の世界にいるもしくはいなければなりません。そのどっちでも、私は彼に対して悲しみを感じてしまいます。
「それでどうしますか? 今でもお嬢様なら詰所で対応してもらえると思いますが」
ルーナは暗に私に彼を詰所に連れて行ったほうがいいんじゃないかと進言しました。それは当たり前の判断だし、私だって平常時なら彼がどんなに幼い子供であろうと詰所に連れていきます。別に詰所で私を狙ったことを後悔しなさいなんてことは考えていません。詰所で情状酌量が認められれば表の世界に入れるように色々と教育とかを施すから悪いことではありません。でも、私は彼に興味を持ってしまいました。
「ふふふ……」
「お、お嬢様?」
おっと、つい笑みが溢れてしまいました。それを見たルーナがひどく怯えた表情をしているがそれは心外です。
「彼を使用人室で眠らせておいて。明日、お父様に彼を交えて話したいことがあるの」
「分かりました。では、失礼します」
やはり、ルーナはこういう時に頼りになります。ときどき感性が一般人寄りになるけど、基本は私に忠実で私のやることをいちいち勘繰らないで私を信頼しています。それにしても、攻撃が全く当たらない相手ですか。自分の思い通りに動けないってすごく疲れますね。少しだけ襲った疲れを癒すために私はベットに向いましたら――
ズドーーン……!
「あっ」
けたたましい音が鳴るとその音が出ていた場所にベットがありました。しかし、そこにベットはなく、正確にいえばそのまま下に落ちたのような場所に存在はしていました。
「とりあえず下で寝ましょう。それで……」
私は九割自分のせいでめちゃめちゃになった自分の部屋を眺めました。
「お小遣いカットね。はぁ〜」
その場から飛び降りて私はそのままベットに身体を預けました。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます