異世界学院の自称「中二病」
帝王カステラ1号
第1話 無事死亡
高校生。トラック。極めつけは厨二病。
これらの単語を羅列すればお察しの良い人は理解してくれるだろう。この俺、真島剛は異世界転生というやつをしてしまった。
…なぜこんな事になったか。すべてはほんの30分前の出来事である。
高校生ともなればもちろん学校、授業がある。
中二病という心の病をこじらせた変人ではあったが、別に不真面目というわけではなかった俺は日々妄想を膨らませながら、授業を受けていた。己の真名、クールな口調、背負うべき業に頭を悩ませていた午後の体育時にそれは起きた。
突然暴走したトラックが学校に突っ込んできて危うく轢かれそうになったクラスの美少女を助けたものの命を落とす…
なんてことは別に起きなかった。そのとき起こったのは長距離走の授業で走っているときにお留守になっていた足元の水筒に躓いて転び、運悪く頭を打って死んだという恥ずかしすぎる事故である。
そう、トラックとは陸上競技用のトラックのほうなのだ。なんという言葉狩りだろうか。
ネットの某動画サイトの先輩方もここまでしないというレベルである。こんな嘘みたいな方法で異世界転生の風物詩、トラックでの死亡を達成した俺は目を覚ますとあの世にいた。
目を覚ました俺の前には、大層美しい女神を名乗る女性がおり、俺の死亡についていろいろ語ってくれた。本来は死亡するはずではないだの、そうなったからには人の手によるのもだの、いろいろだ。
そんな俺を憐れんで、なんと女神さんは転生せずに私の眷属になれるように取り計らってあげようなどと言ってきた。彼女の眷属になれば、天界で暮らせるし、自らのための時間が多くでき、幸おおき人生になる。
さらに、天界通信は月々、10GBまで無料、スーパーでは3割引きで買い物ができるし、彼女といつでも会えるのだそうだ。
そんなことを聞かされていたら嫌でも俺でも気づく、この女神様信者が少ないんだなぁと。そんな破格な条件が普通デメリット無しにあるわけがない。
というかどんな待遇でも吞むはずがない。中二病なめんな。こちとら普段から最強の魔法を夢想する人種だぞ。
次の機会にでもー、と適当にあしらわせていただき、そうそうに異世界に転生を果たしたのだ。
転生する際、女神さまの恩寵がどうこう言っていたが、この時の俺は自らの夢が叶うことに心躍らせていたため、ガンスルーであった。
さぁ、どんな異世界生活を楽しもうか…。
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