地図【三つ目】
半年が過ぎた。
季節の変わり目のせいか盛大に体調を崩してしまい、この三日間、食事とトイレに起きた以外はほとんど寝ていた。一昨日は、風呂に入ってベッドに転がった際に時計を見ると二十二時を過ぎたところだった。いつの間にか寝ていたことに気づいて目を開けると、時計は二十二時前だった。あれ、見間違えたか、と思ったが、テレビを点けて丸一日経っていることを理解した。こんなに寝れるものか、などと考えながらテレビをぼんやり眺めているうちに、また寝落ちして、次に目が覚めたのはつい先程だ。時計を見ると朝の八時を回っていた。
起き上がると、身体中からぎしぎしといった音が出そうなくらいに固まっていた。三十時間以上まったく同じ体勢で寝ていたせいだ。全身を伸ばすと、口からうめき声が漏れた。のろのろと起き上がり、トイレへ行く。キッチンで冷蔵庫からミネラルウォーターを取り出し飲み干す。そうすると少し目が覚めてきて、次に空腹を感じた。
まだ本調子じゃないこともあり、これから出かけるのは面倒だった。出前でも頼みたいが、こんな朝から配達してくれるところはないか…検索するためにスマホを拾い上げると、電源が切れていた。そういえば充電するのを忘れたままだった。通りで静かなわけだ。電源ボタンを長押しして起動する。しばらくして通常のホーム画面に切り替わった。ぼーっと画面を眺めていたが、思わず眉を顰める。通知百件。珍しい。普段は数日放置しても二桁もいかない。家族や知人に何かあったろうか。少し緊張しながら通知をタップする。
先日会った友人の名前が表示された。通知のほとんどが着信で、残りは、何枚かの写真と、メッセージだった。
トーク画面を開いた。最後に送られてきていた内容が目に入ってきて、急いで電話をかける。不通。何度かかけ直してみたが、「おかけになった電話は、電波の届かないところにあるか…」とアナウンスが流れるだけだった。諦めて電話を切る。
最後に受信していたメッセージが、頭の中で何度も繰り返される。
助けてくれ、見つけた
メッセージも送ってみるが、当然、既読にならない。彼の実家の電話番号は知らないし、出ることのできる人間がいるのかもわからない。勤め先は詳しく聞いていなかったから連絡先はわからない。
彼と連絡が取れなくなったと、共通の知人たちにメッセージを送っておいた。事件や事故、あるいは急な病気かもしれない。無事に連絡が取れれば笑い話になる。
もう一度、トーク画面を開いた。メッセージを遡っていく。そこでようやく、彼が何をしていたのかがわかった。
あの写真の場所へ行ったのだ。どうやら一緒に飲みに行った翌日、地元に戻った彼は、仕事終わりに車で地図の場所に向かったらしい。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます