Dont.Stop!!

雷牙

第1話 おはよう非日常

おろしたての黒スーツにバッチリキメたヘアスタイル、相棒兼形見のデザートイーグルをホルスターに入れて、綺麗な革靴、ピカピカな状態で入社した会社に初出勤!!

...だったはずなんだが。


「グオオォ!!待て!!肉喰わせろ、人カス!!」


絶賛、人喰いの化け物に追われてまーす。


「なんでだァァァァ!!なんで、初出勤初日からこんな目に遭うんだァァァ!!」


理由は簡単、出勤まで時間があるからと路地裏にいる猫ちゃんと遊んでいたら、化け物が空から降ってきた。

猫ちゃん?猫ちゃんはどさくさに紛れて消えたよ。

ちくしょー!!薄情な猫ちゃん!!でもそこが可愛い。

後ろから追いかけてくる人喰いは俺が避けたり、倒した障害物をなんともないようになぎ倒して近付いてくる。

それもそのはず、相手は化け物で、そん中で割と最悪な部類【鬼】。

60年前に現れた魑魅魍魎共の1種だ。


「待てと言ってるだろうが、小僧!!」


「待ったら、喰われんじゃん!!美味しく頂かれちゃうじゃん!!ヤダよ、バーカ!!」


【鬼】

その存在は、この国、日本において割とポピュラーな存在だ。

童話やら神話、歴史に置いても割と出てくるような連中だ。

身体はでかくて、身体能力も高く、火を吹いたり、妖術を操ったりするらしい。

あと、割と種類が豊富。


「さっきからちょこまと逃げやがってぇ!!大人しく喰われろ、チビ助ぇ!!」


追ってきてる【鬼】の種類は、青鬼。

主食は人で体長は3M程のデカブツで筋骨隆々、あと禿げた頭にはちょこんと小さい角が生えている。


「オラァ!!」


「あぶねぇ、殺す気か!!ハゲ!!」


あいつ、もの投げてきやがった。近くの壁にめり込んだぞ、コワ!!

後、ハゲって言ったら青筋たてた、気にしてんだな化け物も。

今はまだ狭い通路で障害物があるから、追いつかれてはいないが、それも時間の問題だなぁ。

だが、時間的にそろそろのはずだ。


ピロン


来た!


《祓魔許可が下りました》


スマホから聞こえた、通知音とこの音声、これは魔を祓う許可が降りた証。

この日本において勝手に魑魅魍魎共を祓うのは違法である。

理由?そんなの知らん、なんか文字がいっぱいで分からんかったからな。

だが、まぁこれが鳴ったってことは反撃開始だ。


「死ねや」


身体を反転させ腰に引っ提げた、ホルスターから素早くデザートイーグルを抜き、1発2発と弾を撃つ。

この狭い通路にみっちみちに詰まった筋肉ハゲ、外すわけがない。

反動はクソ強くて肩に負担がすげぇが、その分威力はお墨付きだ。



「がァァァ!!痛えじゃねぇぇか、糞ガキが!!」


「さっきから、俺に対する呼び方安定してなさすぎるだろ」


「許さねぇ!!引き裂いて、最大限痛みを与えてから喰ってやる!!」


当たった場所は、右足太腿と左腕の肘付近、いくら鬼が頑丈でも銃で撃てば弾は貫通するし血は流れる。

そして撃ち込んだ銃の弾、これは魔に効くと言われる金属、【青銅】で作られた弾。

効かないわけがない、そろそろ効果も表れるだろ。


「ガ!?がァァァ!!あづい!!なんで、火が?!」


禿げた青鬼の傷口から青白い炎が現れて、青鬼の身体を焼き始める。

これが青銅の弾丸の効果、悪しきものを聖なる炎で燃やし尽くし、祓い、灰にする。

二酸化炭素も出ない、神秘的な現象で死体の処理もしなくていいから凄く楽で環境にも俺にも優しいクリーンな手段である。

ひとつ欠点があるとするならば、


「てめぇ、高ぇ弾使わせやがって糞が!!死んで詫びろ、ハゲ!!」


「イダイ、イダイィィ!!ギィアアアア!!」


そう、高いのである。

普通の弾が、1発60円から700円ぐらいなのに対し、この弾はその加工技術の面倒さと需要の高さから1発1万程のお値段となっている。

普通に金食い虫である。


「ユルジテ、タズゲデェェェ!!アヂィィィ!!」


「殺しに来といて許してとかバカかお前」


バカがなんか騒いでうるさいので頭に1発ぶち込んで黙らせる。

ハゲは崩れ落ちて、そのまま青銅の炎に焼かれ、灰になった。

灰は風邪に吹かれて飛び立ってあたりは静かになる。

ハゲが暴れた痕跡だけ残して。


「あ、やべ」


時計を見るともうすぐ出勤時刻である、社会人にとって遅刻はマナー違反。


「急げぇ!!」


これが日常、これが始まりである。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

Dont.Stop!! 雷牙 @haruhubuki45

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ