第28話 深淵への渦
レオは海の中、深い青に包まれた世界に浮かんでいた。彼の目の前には、海底城へ続く深淵が口を開けている。黒く蠢く水の流れが、まるで彼を誘い込むように渦巻いていた。
「これ以上泳いでいくのは無理があるな……何か、もっと効率の良い方法は……」
レオは腰に携えた剣を見つめ、ふと思いついた。
「そうだ、これなら……!」
彼は魔導書を開き、かつて村で見つけた「水流制御」の呪文を確認した。
「《アクアヴォーテックス》!」
剣に魔力を込め、勢いよく水中で回転させた。水が剣に吸い寄せられ、激しい渦を巻き始める。
「よし、あとは俺が乗るだけだ!」
レオは渦の中心に飛び込み、剣を前に突き出して体を小さく丸めた。高速回転が彼の体を包み込み、水の抵抗をほとんど感じないまま、渦の力が彼を深海へと引き込んでいく。
視界はぐるぐると回り続け、上下もわからなくなる。しかし、彼は集中を切らさなかった。剣を軸に回転し続けることで、渦が乱れることなく安定している。
「このまま……行け!」
渦は深海の闇を切り裂き、光が消えた暗黒の海域へと突入する。レオは呼吸の魔法を維持しながら、剣を握りしめる手に力を込めた。
突然、渦の中に何か硬いものがぶつかった。レオは回転を止め、水中で静止する。目の前には、巨大な岩壁がそびえ立っていた。そして、その岩の隙間から、微かに人工的な光が漏れている。
「ここが……海底城か?」
レオは剣を握りしめ、ゆっくりと岩の隙間に近づいた。
彼の胸は期待と緊張で高鳴っていた。謎の巨大な影、ヴァルスの残した謎、そして海底城に住むという村長の息子――が待っている。
「待ってろよ……今、助けに行くからな。」
渦を使っての移動で大きく魔力を消費していたが、彼の瞳にはまだ力強い光が宿っていた。
そして、彼は新たな冒険へと一歩を踏み出した。
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