第15話 合流

(レオ視点)


森の中、ひっそりとした小川のほとりで、レオは疲れた体を休めていた。

先ほどの戦いで消耗した魔力を少しでも回復させるため、彼は清らかな水を手にすくって口に含んだ。


水面は静かで、月の光を映して銀色に輝いている。

その美しさに一瞬心を奪われかけたその時、レオの目に奇妙な光が映った。


水の流れの中、光の鳥が羽ばたいている。

それは普通の鳥とは違い、透き通った体を持ち、青白い光を放っていた。


レオは立ち上がり、目をこすった。


「まさか……」


光の鳥は水の上を滑るように進み、レオの前でふわりと浮かび上がった。


「村長……?」*


鳥の光が一瞬強まり、空中に魔法の文字が浮かび上がる。


「村は虚無の軍団に襲われ、我々は持ちこたえたが、次はいつ奴らが来るかわからない。援護を頼む……お前の力が必要だ。」


グレイ村長の声が、レオの耳元で直接響いたかのように鮮明だった。


彼は拳を握りしめ、光の鳥に向かって強く頷いた。


「わかった、すぐに行く!」


光の鳥は再び輝きを増し、川の流れに身を委ねた。

レオもその流れに従い、魔法の本を開く。


「《水流操作(ウォーターストリーム)》!」


水面がうねり、レオの足元に渦を巻いた。

水は柔らかく彼を包み込み、まるで川そのものが彼を運ぼうとしているかのようだった。


彼は意を決し、川の中に飛び込んだ。

水流は彼を受け止め、穏やかながらも力強く下流へと導いていく。

光の鳥は彼の前を飛び、まるで道案内をするように川面を滑っていく。


レオの故郷、グレイの村はこの川の下流にある。

幼少期を過ごした懐かしい場所、そして今、危機に瀕している場所。


川の流れに乗り、彼は過去の記憶を思い返していた。

村長のグレイは、彼にとって第二の父親のような存在だった。

魔法の使えない少年だったレオに、剣の訓練や生きる術を教えてくれた恩人だ。


「絶対に間に合わなきゃ……!」


彼は自分の中で燃え上がる決意を再確認した。


やがて、川の流れが広がり、見覚えのある橋が見えてきた。

橋の向こうには、煙を上げる村の家々が見える。


レオは川から飛び出し、岸に上がるとすぐに駆け出した。

光の鳥は彼の後ろで消え、グレイ村長からのメッセージは役目を終えたようだった。


彼の足音は、焼け焦げた地面に響く。

村の門は半壊し、村人たちは防御の準備を整えている。


そして、その中央には、光の剣を手にした村長グレイの姿があった。


「レオ……来てくれたか!」


グレイの顔には、疲労と安堵が入り混じった表情が浮かんでいた。


レオは息を切らしながらも、力強く頷いた。


「もちろんです。僕にできること、すべてやります。」


二人の間に交わされたその言葉には、言葉以上の絆と信頼があった。


虚無の軍団との新たな戦いが、今まさに幕を開けようとしていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る