第14話 襲われた村
(村長視点)
冷たい風が、焼け焦げた村の大地を撫でていた。
家々は崩れ、煙が空へと昇る。瓦礫の隙間から、村人たちのすすり泣きが微かに聞こえてくる。
村長のグレイは、手にした光の剣を強く握り締めた。
白銀の刃からは、なおも柔らかな光が溢れ、周囲の暗闇をかき消していた。
「皆、大丈夫か!」
彼の声に、村の戦士たちが疲弊した体を引きずりながら集まってくる。
傷ついた者、魔力を使い果たした者、それでも彼らの目には戦意が宿っていた。
「虚無の軍団は退けた……だが、まだ終わってはいない。」
グレイは、地面に横たわる黒い霧の残骸を見つめた。
虚無の魔法で作られた兵士たちは、討たれると影のように崩れ去る。
だが、彼らが持ち込んだ呪詛の残滓は、村の地脈を蝕んでいるようだった。
「ヴァルス……お前の手は、ここまで伸びているのか。」
村長は忌々しげに呟いた。
影に覆われたこの村は、ヴァルスの計画の一端に過ぎないのだろう。
グレイは光の剣を地面に突き刺し、両手を合わせて祈るように呪文を唱えた。
「聖なる光よ、この地を清めたまえ……《浄化の光(ピュリファイライト)》!」
剣の刃から溢れる光は、波紋のように地面を這い、黒い霧の痕跡を次々と消し去っていく。
その光は、村人たちの傷を癒し、疲弊した心を温めた。
一段落ついた村の広場で、グレイは膝をつき、肩で息をしていた。
村の守り手として、彼は幾度となく危機を乗り越えてきたが、今回の敵は格が違う。
「力が……足りない。」
彼の目に映るのは、未だに震える子供たち、家族を失い絶望する人々の姿。
グレイは、決意を込めて立ち上がった。
彼の手には、魔力を込めた古びた巻物が握られていた。
「今こそ、あいつの力が必要だ。」
巻物を広げ、光の剣をかざす。
光の粒が巻物に吸い込まれ、魔力の文字が浮かび上がった。
「レオ……聞こえるか?」
グレイは、遠くにいるであろう若き魔法使いに呼びかけた。
「村は虚無の軍団に襲われ、我々は持ちこたえたが、次はいつ奴らが来るかわからない。援護を頼む……お前の力が必要だ。」
彼の言葉は光の文字となり、巻物から光の鳥が形作られた。
光の鳥は、翼を広げ、夜空へと舞い上がった。
青白い光を尾に引きながら、レオの元へと飛び去っていく。
「頼んだぞ、レオ……この村を、皆を救ってくれ。」
グレイは空を見上げ、光が闇を切り裂いていく様子を見つめていた。
彼の背後では、村人たちが立ち上がり、再び立ち向かう準備を始めている。
光と闇の戦いは、まだ終わっていない。
だが、希望はまだ消えていない──。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます