最果てから訪れる番外地

雛形 絢尊

第1話

この世の終焉を告げられてから

早6時間が経過した。


「思ったよりも短かったな人生って」


と紙煙草を右手で持ち、修治はいった。

煙を伊豆の麓に吐き出した。


「免許も取り立てだぜ?まだ」


「いろんなところ行ってみたかったな」


「まあ、伊豆来れたんだし、

いいほうじゃねえ?」


「それもそうだな、

それにしても海しかねえな」


ふう、と私はため息を拝借し、顔を俯かせる。


「海の音、いいよな」


「おう、海の音を聞きながら終わりを迎える、割と幸せだな」


「そうだな、

来るまでに結構な人が海にいたな」


「結局、人間海から始まって

海で終わるんだろうな」


「海に帰るか」


「俺ら、休みでよかったな」


「そうだな、デスクワークしながら

最後を迎える人もいるんだろ?」


「そんなの嫌だね、何のために生きたんだか」


「それを考えるのが人生、だっていうのに、

理不尽だよな死って」


「お前哲学者にでもなるのか?」


「哲学っていうか、持論だな。

そう思わないか?」


「まあ、思わなくはないな」


「そうだろ?あながち間違いじゃねえ」


「で、どうだったんだよ雫ちゃんとは」


「あ、あの喧嘩か?仲直りしたよ」


「チューしたか?」


「そんなこと聞くなよ。中学生か」


「どうなんだ」


「したよ、何だよ恥ずかしい」


「そうか、そうか。よかったな」


「お前こそ、どうなんだよ」


「俺は何もねえよ、お前はどうなんだ、

最後の日だぞ、無理してでも

会いに行けばよかったじゃんか」


「それもそうだがな、

俺はお前を選んだんだよ

あ?変な意味じゃねえよ」


「そうか、ありがとな」


「黙んなよ。おい、泣いてんのか?」


「泣いてねえ、笑ってんだよ」 


「嘘つけや、」


「まあよ、そろそろ時間だ」


「そうだな、どうしようもねえな」 


「明日も生きてたら蕎麦でも食おうぜ」


「蕎麦?よりによってか?」


「蕎麦だよ」


「ああ、分かった。生きていたらな」

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最果てから訪れる番外地 雛形 絢尊 @kensonhina

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