エピローグ
「もういい年なんだし、真面目なお付き合いしないと婚期を逃すよ?」
まだ結婚は先でしょ? そう思っているうちに婚期を逃すと、友人のミクに諭されて、ミクと2対2のコンパをした。
「俺、ご飯作るの得意だし、掃除も好きな方だよ?」
まさかコンパで、婚活めいた雰囲気を出されるとは思わなかった。
好印象のコンパは、連絡先を交換して、後日デートをする話で幕引きした。
(そろそろ琉星さんとは潮時かな。)
次の休日。琉星さんを呼び出し、別れを告げた。
「もうこの関係は終わらせたいから。さようなら。」
彼の言葉を待たずして踵を返す。
まだ好きな気持ちはある。ふいに涙が溢れた――その時、琉星さんに強い力で手首を掴まれた。
「は?? 俺等の関係って、そんなあっさり別れられる関係なの?」
「そりゃそうですよね? だって私、琉星さんのセフレだったんですから。」
「はあ? 俺等いつの間にセフレに成り下がってた??」
「はい? いつの間にって。最初っからじゃないんですか?」
「ふざけんなよ。俺のこと遊びで付き合ってたってことかよ?」
「遊びで付き合ってたのはそっちでしょ?!」
ぐっと力を込められて、彼の手を振り払おうにも力が及ばず。「痛い、」とわざとらしく声を上げれば、「わざと痛くしてんの」と返されてしまう。
「あのねえ。セフレが1年も続くわけないでしょーが。」
「だって!! 普通、付き合ってたらホテルに行って解散なんてことにはならないだろうし!」
「だから言ったじゃん。俺、超忙しいから会える時間少ないって。」
「でも私、ちゃんと結婚を見据えたお付き合いをしたいんです! だからもう、他の男性と付き合うことにしたんで!」
「んだよそれっ。浮気かよ?!」
道の往来で、突然声を上げた琉星さん。行き交う人々がこちらの様子を窺っている。
「ち、ちがう! ちょっと、コンパしただけで」
「あ?! コンパだ? それ立派な浮気じゃん!」
「だ、だって琉星さんだって、よく知らない女の人から電話かかってきてたし……」
「あれは姉貴だよ! 姉貴がシングルで子育てしてるから、たまに俺が手伝いに行ってたんだよ!」
「う、うそ」
「ほんとだよ! 子供が二人もいるし、小さいから、姉貴が仕事で忙しい日は俺が代わりに面倒見に行ってたんだよ!」
「そ、それなら、最初からそう言ってくれれば良かったのに!」
琉星さんがようやく手首を離してくれた。気まずそうに顔を反らし、こうつぶやいた。
「面倒みなきゃいけない子供がいるって分かったら、別れを切り出されるかもと思って……」
「え?」
「ごめん。ちゃんと最初っから言うべきだった。頼むから俺を捨てるなんて言わないで。」
「…………」
そんな濡れた瞳で言われると、どうしようもなく愛おしくなってしまう。
「もう別れるなんて言いませんから。顔を上げて下さい。」
「ごめん。京花のこと好きすぎて、会って速攻抱くとか。最低だった。」
「あの、ここ、外なんで。もういいですから。ね? 琉星さん。」
琉星さんの手を握りしめ笑いかければ、琉星さんも安心したような笑みを見せた。
後日、ミクには『新たな歴史の幕開け』と称されることになる。
【FIN】
セフレだと思っていたからコンパをしたのに、浮気だといわれる意味がわからない。 由汰のらん @YUNTAYUE
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